理想怪奇「死竜魔」 (ページ34)

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第五章　【理想怪奇「死竜魔」】ページ34

相手の背後に巨大な魔法陣が展開される。そこから放たれるのは魔力の塊でもある結晶弾。結晶弾は弾幕を張るように無数に、そして高密度で襲いかかる。俺と夢乃は互いに回避行動を行った。

「宙を飛ばれたら私じゃ手が届かない。月城、飛んでる相手は任せるわよ！」
「おう、任せとけっ！！」

　足裏に魔法陣を展開し、超速で相手の懐に潜り込む。魔剣のグリップを握り、相手に向かって斬りかかる。
　しかしそれを相手は素手で受け止めた。光の束が相手の手を焼く音がする。本来ならば決闘札の結界でダメージが緩和されるはずなのに──

「お前、結界の効果を無効化したのか！？」
「そうとも。この決闘に手加減は不要。私たちは正真正銘、互いの悲願と正義のために命をかけているのだから！」

　刃を掴み、アップルは俺ごと振り落とした。その勢いで地面にまで吹き飛ばされるが、なんとか体勢を立て直して受け身を取る。その横を夢乃の札が飛んでいった。『爆』の字が書かれたその札が相手の腕に張り付くと、勢いよく爆発する。

「良いわ、アンタがその気ならこっちだって容赦しない。アンタが竜人族なら回復能力だって十分でしょうしね」
「……やったか？」

　しかし、煙を払うように相手の腕が横に伸びた。その指先は竜の鋭利な爪を象っており、それが彼女の結晶武装だと思われる。

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【『結晶武装(けっしょうぶそう)』
　決闘を行う際によく使われる結晶弾は、自身の力を光の形に可視化して打ち出すものであるが、それを応用すれば武器に変換することも可能とされる。それを『結晶武装』と総称する。
　結晶武装は想像力と自身に眠る力のコントロールを要し、生半可な実力では形成は難しい。

　 (理想年紀第一巻番外
　「理想の都のすゝめ」より引用) 】
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　彼女の両腕を覆うほどの巨大な鉤爪は、彼女が指示を出すべくして突き出された腕によって俺たちに襲いかかる。引き裂き、踏み潰さんとするその攻撃は、まるで目の前に巨大なドラゴンが居るかのようだ。

「これだけでは面白くもなかろう。
　アビリティ発動、『鏡の国のジャバウォック』！」

　突如、割れたガラス天井のガラスが一つに集まる。一体どんな仕組みになっているのやら、それらは巨大な鏡となって四方に置かれた。前に鎮座する鏡の中から奇怪な怪物……ジャバウォックが姿を表す。ジャバウォックそのものと言うよりは、アップルが使役していた結晶武装に近いものだ。