理想怪奇「死竜魔」 (ページ30)

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第四章　【冷酷なる竜の召使】ページ30

しかし。
　花坂の体から一滴の血も出ない。不思議に思った頃にはもう遅く、花坂だと思われていたその姿は朝顔のツタと幻術の合わせ技であり、ツタがルナディを拘束する。
　そして花坂だと思われていた物体が居た柱。その影からルナディの頭上へ飛び上がる一つの影。

「倒されて詫びろ、このトカゲ野郎！！」

　人間の拳から放たれたとは思えないほどの強力なストレートパンチが、ルナディの顔面を直撃した。ルナディの身体がツタを引きちぎって地面へと吹き飛ばされる。衝撃、それと同時に決闘の終了を知らせるブザーが鳴り響いた。

　全身傷にまみれ、服についたほこりを払い花坂は口にする。

「私の勝ちよ。さあ、道を開けなさい」
「…………俺が……、下等生物相手に、負け……？」
「そうよ。あんたは下等生物なんかに負けたのよ。残念だったわね、でもこれで分かってもらえたかしら？人間ってのは、あんた達みたいにゴリ押ししか脳のない連中とは違うってコト」

　ルナディはその台詞にまるで不満があるかの様に花坂を睨みつける。
　と、階段から誰かが駆け降りてくる足音が聞こえてくる。やって来たのは、地上でスフィアと戦っていた青年、月城想魔であった。

「夢乃、無事か！？」
「ええ。少し手間取ったけど何とか倒したわ。
　……さて。あんたが夢の珠を持っていないって事は、あんたの支えている主君が持っているって事で良いのよね？案内して頂戴」
「だ……れが、貴様の様な、下衆な下等生物を、お嬢に謁見させるか……」
「決闘のルールをご存じない？郷には郷に従えと教わらなかったかしら？それとも、あんたの主君はそれほどに外界との交流を嫌がっている根暗だとでも？」
「貴様ッ、お嬢に対し何たる不敬を！！」
「よーしよしよしよし、落ち着け！夢乃は相手を煽るな！あんたもその忠誠心には感服するが、こんな煽りに乗っかるな！」