理想怪奇「死竜魔」 (ページ3)

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序章　【招かれざる客】ページ3

［理想年暦 1672年九ノ月・十五日］

【『決闘(けっとう)』
　理想年暦 1294年九ノ月・二十日に定められた、理想の都内における戦闘ルール。
　同年に起こった竜魔戦争によって多大な被害を受け、命を落としていった多くの住民を悼み、二度とこのような惨劇を起こさないよう理想の都を想像した七種の種族の頂点ら『理想想像七賢主』により定められた。この掟を定めた事で、命を脅かすような争いごとやぶつかり合い、種族間のいざこざによる殺し合いを避けることに成功。最近ではこの掟は『力比べをする遊び』として定着しており、主に若者の間で流行っている。
　また、決闘の醍醐味として理想の力を強く持つ者たちが、自分に適した理想・あるいは望んだ願いを『能力』を併用することで具体化した技『アビリティ』を使用して、その勝負を盛り上げるものがある。

　決闘の決まりとして、『互いに1対1であること』を前提としており、『結界を張り、その中で決闘を行うこと』が義務付けられている。勝敗は『どちらかが戦闘不能になる』こと、『どちらかが降参する』ことの二種類である。注意として、戦闘不能と判断された者が無理に続行しようとしたり、勝敗が決まっているにもかかわらず攻撃を加えようとした場合、結界がそれに反応し動きを封じるようになっている。
　勝者は敗者の出来る範囲の命令を下す事が可能である。但し、生命に関わることは対象外とする。
　 (理想年紀第一巻番外
　「理想の都のすゝめ」より引用) 】

「……さて。
　あんたが動けない理由が分かるかしら？」

　夏の終わりが近づく9月。涼しいと感じさせる昼下がり。まだ蝉は鳴いているが、真夏の時ほど騒がしいわけでもない。
　そんな中で俺、『月城想魔(つきしろそうま)』はいつも通り森の奥にある自宅から飛び出し、自慢の魔法で宙を跳び、少し遠くにある屋敷にいる華道家の幼馴染に会いに来た。理由は勿論、彼女と決闘をしたいからだ。その彼女こそ……。