第二章 【お騒がせ埋葬人】 ページ15
「うっわぁ……こりゃひでぇや。ボロッボロじゃねぇか。墓荒らしにしたって流石にやり過ぎだろ……」
まるでそこが戦場だったかの様に土は抉りかえされ、埋葬された死者の名前が彫られた墓石はバキバキに折られているものが多い。寧ろ無事な墓が少ない。
だが、なんとなく察しはついた。『決闘が終わった後』なのだろう。決闘用に使われる結界は『結界外に被害を出さないために用意されるフィールド』であり、『結界内の物までは守り切れない』という性質がある。その為決闘というのは普通広い場所で行われるものだ。だが、こんな狭い場所でやった、という事は……。
「さては夢乃の奴だな。大方、邪魔されたから実力行使で相手をボコボコにしたんだろうな」
夢乃の度胸と思い切りの良さは、多分理想の都一だ。相手の墓地の管理者も可哀想すぎる…。
「兄ちゃん、見ない顔だな。先祖の墓参りか？」
声がした方を向くと、ボロボロの姿でスコップを引きずっている少年の姿をとらえる。どうやら彼が夢乃の相手をしてしまった可哀想な奴が彼らしい。
「いや、ちょっと野暮用で。そういうお前は？」
「お前じゃない、木原アラタだ。
野暮用っていうと、シスターに用事か？アンタ、信者だったんだ」
「いや、別にそんな──」
……いや待て。そういう事にすれば事を荒立てずに済むのでは？
「あー……まあ、親父がな」
「ふーん、そうなんだ。って事は家族でか。
教会の入口は墓地から裏手だからな。ぐるっと回ってくしかねーぞ」
「お、おう。サンキュー」
すんなり丸め込めたな。じゃあ後はちゃちゃっと潜入して───
「ところで、」
「ハイッ！？」
びっくりして思わず叫ぶ。が、相手は気にする事なく口を開く。
「さっきの姉ちゃん、アンタの知り合い？」
「さっきの、姉ちゃん……？」
「赤い着物着た、目つきが悪くって横暴そうな姉ちゃんの事だよ」
「ああ。まあ、そうだけど」
「ふーん」、と興味なさげな返事を返してくると、徐にポケットから一枚の札を取り出した。そして足元に叩きつければ、結界外発動する。
決闘を申し込まれたのだ。
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作者名：ミンミンゼミ31039 | 作成日時：2018年12月8日 22時
