理想怪奇「死竜魔」 (ページ14)

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第二章　【お騒がせ埋葬人】ページ14

［九ノ月・十五日十九時四十分ごろ］

　ユウトの道案内により、森の奥までやって来た。夕日は沈み、夜目がきかないとまともに見えない状況にまでなっているこの暗闇の森の中。これは案内人がいなけりゃ数時間彷徨い続けていたに違いない。竜人族の男に蹴られた腹も痛いし。

「腹を抑えているようだけど、大丈夫かい？」
「あ？あぁ、大丈夫だよ。へーきへーき。このくらい、大した事ねーって」
「そうかい。
　……見えるかい？向こうにある、淡いランタンの光が」

　その方向へ指をさされてやっと視認できるほどの弱々しいランタンの光が、俺たちの道のりの先を示している。

「花坂夢乃という少女が向かったのはあのランタンの灯る場所。『神竜教会』と呼ばれている、竜人を崇める魔女の住処にして邪教徒の祈りの場所。邪悪の象徴となる竜を信仰する『神竜教』の本拠地ってところかな」

【『神竜教会(しんりゅうきょうかい)』
　正式名称『竜人信仰教会』。迷いの森林の奥深くに建てられた、竜人族の女帝の鱗を模した装飾のなされた教会である。名前の通り、竜人族が神の御使であるという教えの神竜教の本拠地となり、総責任者としてシスター『スフィア・イースター』という女性が管理している。
　迷いの森林の奥深くに建てられた為、今や名前だけ知られているような場所であり、一種の肝試しスポットとされている。しかし、ただの人間には辿り着けないように結界が施されている為、信者でないと神竜教会にまでつく事は難しいだろう。

　 (理想年紀第五巻三章
　「理想の都の代表建築物」より引用) 】

「神竜教会？」
「君、迷いの森林に住んでいるんじゃなかったのかい」
「最近になって移住してきたから知らないんだよ」
「あぁ、そうなんだ。なら知らないのも無理ないか」
「……でも、理想年紀では『信者じゃないと辿り着けない』って言ってたぜ？」
「あー。それ、あくまで人払いの結界だから。人間以外なら簡単に視認できるんだよ」

　そう言いながらユウトは入り口となる門を開け、入りたまえと言わんばかりに道を開けてきた。

「じゃあ、僕はこの辺で。一体全体何が起きているのかは知らないけど、気をつけていくんだよ」
「おう。ありがとな、ユウト」

　穏やかな笑顔を浮かべ、それじゃあと手を振って別れる。
　意を決して門を潜った。真っ先に出迎えてくれたのは小規模の墓地だった。だが、その光景はあまりにも悲惨なものであった。