終章【日常の帰還】 ページ40
「どうぞ」
「ああ、ありがとう」
「どっから湧いてきたこのトカゲ」
「しばくぞ」
「この召使、随分とフランクになったわねぇ。まだ1日しか経ってないわよ」
「君に打ち負かされてから、ルナは君に興味津々だ。君、さては変人を集めやすい性格じゃないか?」
「そうかしら。まあ人並みに好かれてる気はするわ」
しばしの談笑。……不意に、夢乃はアップルに一つ質問を投げかける。
「結局、あんたが命を張ってまで会いたかった家族って誰?」
「ブルーのこと?あの子は私の弟よ。幼い竜人族の戦士だった」
「そして、幼いながらも多くの魔族を屠ってきた名誉ある英雄でもある」
「けれど所詮は生き物だ。不意を突かれて私の目の前であっけなく死んでしまったよ。……そこから私は、大きな喪失感と憎悪、憤怒に無力さを呪い、逆鱗に触れられて怒り狂う竜の様に暴れ回ったというところだ」
「はーん、そう。……それで、成功したの?」
「ああ。不完全な状態ではあるがあの子は目を覚ましてくれたよ。
……しかし君たちの言う通り、私は私の悲願のために多くの命を犠牲にした。私の願いは既に果たされた以上、今度は償いをする為にこの命を使うつもりだよ」
アップルは徐に立ち上がり、庭にある夢の珠を守る祠へと歩を進めようとした。しかしそれは夢乃が彼女の腕を掴む事で阻止される。
「何をするのか分かんないけど、命張らないで良いわよ。むしろされたら迷惑」
「けど……しかし、私の我儘のせいで夢の珠は力をほとんど失ったのでしょう?理想の都を安定させるにも夢の珠は必要不可欠。その力を取り戻すには私が命を使って元に戻すのが一番で──」
「いらんいらん、そんな軽はずみに命使うなっつの。ほら、アンタも何か言ってやりなさいよ」
「俺はお嬢が決めたのならそれでいいと思っている」
「っはぁーー……竜人族ってのは全員こんな感じなの?馬鹿ねぇ。
良い?従者ってのは主人のいう事をただ『はいそうですか』ってただ従うだけじゃないの。時には主人の前に立って意見を申し立てする。主人を間違った道に進ませない事も、立派な従者の役目よ」
夢乃の言葉にルナディは口籠る。どうしたらいいのかまだハッキリとは分かっていない様だ。しかし、ルナディは少しずつ言葉にしていく。
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作者名:ミンミンゼミ31039 | 作成日時:2018年12月8日 22時