理想怪奇「死竜魔」 (ページ17)

今日:1 hit、昨日:1 hit、合計:2,334 hit

第二章　【お騒がせ埋葬人】ページ17

【『木原アラタ(きはらあらた)』
　神竜教会が管理する墓地の責任者。木原一族は埋葬人として活動している家系であり、神竜教会に従事する前は各地で埋葬を生業として放浪していた。彼の持つスコップは代々受け継がれてきたものらしく、とても頑丈にできている。しかし、初代から受け継がれてきた埋葬用のスコップには死体の執念がこびりついており、呪われたスコップとなった。呪いは触れたものに不幸を招く。それは使い手にも例外なくやってきた。
　それを危惧した瀬戸すみれは木原一族の末裔であるアラタに『呪われない』能力を与えた。それにより愛用スコップに呪い殺される心配はなくなり、13歳ながらもたくましく埋葬家業を続けている。

　 (理想年紀第三巻
　「人間一覧」より引用) 】

　今まで何体の死体を埋めてきたのだろうか。それすら分からなくなるほどにそのスコップは禍々しい雰囲気を醸し出しており、『触れたらまずい』ということがよくわかる。

「“呪い”ねぇ。いくら決闘で威力が下がっているとはいえど、頭上から植木鉢でも降ってくるような呪いはかかりそうだよな。」
「軽口叩ける余裕があるならコレでもくらえ！
　アビリティ発動！『コープス・パーティナイト』！」

　スコップを勢いよく地面に突き刺す。すると墓石が蠢いた。グラグラと揺れ、そこから現れたのは埋葬された死体…。いわゆるゾンビという奴だった。

「ずっりぃぞ！決闘は1対1だろーが！」
「こいつらはアビリティにおける『結晶弾』みたいなもんだからセーフ。いっけぇ！」

　アラタの号令でゾンビたちはゆらりゆらりと近づいてくる。魔剣を構え、両腕を振るってきたゾンビを両断する。ゾンビは悶え、倒れると多くの結晶弾をばら撒いてきた。

「うわ、ゾンビボム！？」
「そういうネーミングもあるのか。今度新しいアビリティ作ろうかな……」

　結晶弾を弾き、迫りくるゾンビたちを切り伏せ、また出てきた結晶弾をかわし……。これではアラタに近づける気がしない。近づくにはゾンビをうまく交わす必要がある。ゾンビたちは切られるだけでなく、結界の壁に激突しても結晶弾で弾幕を張ってくる。こちらがうまく誘導するしかないみたいだ。死体とダンスするなんて夢にも思わなかった。