第一章 【影は光を喰らう】 ページ11
「でも、タダで教える訳にはいかないな。それじゃあ妖怪たちのルールを破ってしまう。そうなると今度は僕が追い出されてしまうからね。だから、口実として決闘を申し込ませてもらうよ」
決闘用に使われる結界札は花坂家の簡易式の物だが、決闘による被害を抑えるには十分な強度を持つ。一度張られれば、決闘が終わるまで出ることも入ることも許されない。決闘の悪いところは相手の否応なしに挑むことが出来るところだろう。諦めて腰に携えている魔剣に手を触れた。少し躊躇したが、グリップを握り鞘から抜く。
月城の流派はちょっと特殊だ。魔剣に認められた者が魔剣を手に取ると、それは不思議と手に馴染み、軽いとすら感じる程に魔剣を振るえる。だから片手で持つことができる。それを利用して、西洋剣使いにあるまじき行為ではあるが、片手持ちで戦うのがこちらのやり方だ。臨戦態勢を取ったのを見た相手は口角を上げる。
「良かったよ、乗ってくれて」
「逃げることができないから仕方がないだろ」
ユウトがひらりと後方へ飛ぶように退き、同時に力の具現化である『結晶弾』を飛ばしてくる。その弾幕を魔剣で切り裂いて防ぐ。
結晶弾を雨のように降らす中で、ユウトの目がトープに光った。瞬間、俺の視界から光が消えた。魔剣の光すらこの目に届かない。これが相手の能力だろう。
「決闘だからね、それなりに行かせてもらうよ。
アビリティ発動、『ナイトメア』!」
【『アビリティ』
能力を持つ者にのみ所持を許される、その人物の理想や象徴を具現化した技のこと。アビリティは個人個人違っており、アビリティを使って戦いを派手にすることが決闘における醍醐味の一つである。一回の決闘に宣言できるアビリティに制限はないが、その決闘中に破られたアビリティは使用できない。一説では、アビリティの所持数は所有者の意思の強さに比例するとも言われている。
また、アビリティを宣言した際には、その宣言者は一時的に身体能力が上昇するなどの有利特性を取得する。しかし、発動者が一定ダメージを受けると『アビリティブレイク』となり、アビリティを強制終了させる。それによる酷い疲労感がやってくる為、諸刃の剣ともいえるだろう。ただし、アビリティの有効時間が切れた際ならその疲労感はやってこない。
(理想年紀 第一巻 番外
「理想の都のすゝめ」より引用) 】
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作者名:ミンミンゼミ31039 | 作成日時:2018年12月8日 22時