凪いだ心に (ページ49)

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４３　天喰side ページ49

ミスコンが終わり観客が会場から出ていった頃。

俺は波動さんの言っていたことが未だに頭に残っていた。

『凪が来てたの！！』

まだ、波動さんは会場に居るのではないか。

つまり…一緒に文化祭を回れたりも、するのでは…？

そう考えてありえない、と首を振った。

波動さんが、俺と一緒に回ってくれるわけない…。

肩を落としていると、遠くに水色の髪が見え
た。

そこには人混みに揉まれている波動さんがいた。

気がついたら手を伸ばしていて、波動さんを引き寄せていた。

「…？天喰、先輩？」

波動さんはキョトンとしていて、上手く状況を飲み込めていないようだ。

自分がした事にハッとして波動さんの手を離した。

「…あ、ごめん…大変だろうと思って…」

よく分からない言い訳を口走ってしまい、頭を抱えたくなる。

あぁ…失敗した…変だと思われたよな…？

顔を逸らしていると、不意にミリオの姿が見えた。

「ん？あ、環だ！！おーい！」

地獄に仏とはこの事か…と少し安心しているとミリオと一緒に居たエリちゃんが顔を輝かせた。

「凪さんだ…！！」

エリちゃんは波動さんに走り寄ると抱きついた。

波動さんもエリちゃんの頭を撫でている。

その姿は仲睦まじい親子のように見えた。

「…随分と懐いているな、ミリオ」

「うん、朝のことが大きかったのかもね！」

「…朝？」

聞けば、ミリオとエリちゃん、波動さんは少しの間だけ文化祭を回ったという。

「いやーエリちゃん、俺と波動さんの子供？ってめちゃくちゃ聞かれてさー…ん？環？」

…なんだろう、胸がモヤモヤする。

…波動さんが、取られるかもしれない…。

…？取られる？
そもそも俺のものなんかじゃないのに…？

俺はこの不思議な感覚に首を傾げるしかなかった。

ただ、絶対に波動さんと文化祭を回らなければいけない、と思った。

(もしかして環…嫉妬！？)

ミリオが微笑ましいような顔で見ていたなんて俺は知らない。