凪いだ心に (ページ39)

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それから二日ほど経ってコスチュームをできる限り直した。

(…あれ、これどうやって渡せばいいんだろう)

流石に三年生の教室に行く勇気はない。

かといって誰かに渡してもらうのも失礼ではないか。

……あ、そういえば、連絡先持ってたよね…。

それで…どこかに呼んで渡せばいいんじゃないか？

名案だ、と早速文字を打とうとするが、

(…ん？これ、どこに呼び出すんだろう)

呼び出す場所によって色々と誤解を生む気がする。

校門とかは生徒の目につきやすいから恥ずかしいけど、二年の寮に呼ぶのも面倒をかける。
でも三年の寮は…絶対誰かに見られる。

…姉に渡してもらう？
いや…理由を聞かれるな。

あぁ…たかがコスチュームを渡すだけなのに何でこんなに悩むんだろう。

これは、もう腹を括って渡すしかないのか…？

…いや、まて。

「…工房に取りにきて貰えばいいんじゃ…？」

そうだ、それがいい…！

なんのリスクもないし、極々自然に！！

そう思い天喰先輩に工房に来てほしいと連絡した。

それから、文化祭の準備で使う部品や道具の点検をして足りないものをまとめていると工房の扉が開いた。

「…あ、波動さん」

まだ頬にガーゼを貼っている天喰先輩が立っていた。

「あ、わざわざすみません…。コスチューム、できる限り直したんですが、性能が落ちているところはちゃんとした会社に頼んでください」

コスチュームを畳んで天喰先輩に渡す。

ただそれだけなのに緊張して鼓動が早くなる。

「ありがとう…助かったよ」

ふにゃりと笑う天喰先輩に一瞬息を呑んだ。

丁度窓から入ってくる日差しで輝いていてとても眩しかった。

「…っ…い、え…お役に立てたのなら…良かったです」

少し顔を逸らしてしまったが、仕方ないと思う。

コスチュームを渡した後は特に何を言うでもなく天喰先輩は工房を出て行った。

顔がやけに熱い。

鼓動がいつもより断然早い。

足から力が抜けて座り込んだ。

なんだ、これ。
苦しい…胸が痛い。

何かの病気だろうか。

病院に行ったほうがいい…？

姉さんに相談……明日、してみようかな。