凪いだ心に (ページ38)

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「は、発目ちゃん…？」

「ん？何ですか凪先輩」

「いや……え、大丈夫？」

お見舞いに行った翌日、工房に顔を出すと目の下にくっきりと隈を作っていた発目ちゃん。

「いやぁ、ちょっとベイビー開発が捗ってしまいまして！！」

「そ、そうなんだ…」

話を聞くと、緑谷さんにサポートアイテムを作っているらしい。

パワー増強的な個性の彼は発目ちゃんとしてもアイテムを作りやすいんだろう。

異形型の個性だったり、個性の発動に特定の条件があったりするとサポートアイテムもそれに合わせないといけないから難しくなるし。

「えっとね、アイテム開発にのめり込むのもいいんだけど、しっかり休みは取るんだよ？」

発目ちゃんにお茶を出しながら言うと彼女は眩しいくらいの笑顔で

「凪先輩の心配は嬉しいんですけど、私文化祭に向けて色々ベイビーを作るので！！終わったら寝ます！！」

とハッキリ言った。

「いや…そう言う事じゃ……もう、止められないか」

またもや彼女の世界に入り込んでしまったのでもう好きにさせる事にする。

変に手を出す方が迷惑だろうし。

そう思い、手元にある天喰先輩のコスチュームに目を向けた。

「…そろそろやらないと」

コスチュームを広げてみると原型は留めているが損傷が意外に激しかった。

取り敢えず破れているところだけでも繕っておこうと針で縫っていると後ろから気配を感じた。

「…？凪先輩それ、誰のです？」

「……あー、発目ちゃん、休憩？」

どこか怖い目をしながらそう尋ねてくる発目ちゃんに冷や汗を流しながら質問する。

「はい。それで、誰のですか？」

「…えーと…サンイーターの…」

わざとヒーロー名で答えてみる。

発目ちゃん、分かるだろうか。

「サンイーター…？……あ、もしかして三年の天喰環先輩ですか？」

即バレてしまった。

…あれ？発目ちゃんヒーロー名とか興味ないと思ってたのに…。

「…正解だよ」

「それで、何で凪先輩が？」

「いや…修繕を頼まれたから」

そう言うとムスッとした顔でどこかへ行ってしまった。

…え、なんだったんだろう。

そう疑問に思ったが、取り敢えず天喰先輩のコスチュームを直そうと手を動かした。