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「…お見舞い、だよね。わざわざありがとう」
「あ、いえ…」
只今、病院の中庭にあるベンチで天喰先輩と座っています。
あの時、天喰先輩に声をかけられて、なんやかんやあり今に至っています。
「…ミリオの所には行ったの？」
「さっき行きました。今は、姉さんが居ると思います…」
…よく考えたら、飛び出していったも同然だよね…失礼なことしてしまった…。
隣に座っている天喰先輩も顔の右側に包帯が巻かれている。
ヒビが入っているらしい…けど、顔面にヒビが入るって初めて聞いた…。
でも、後遺症などは特に無いらしい。
その事に酷く安心した。
「…あの、波動さん…少しだけ話を聞いてくれないか」
「…いいですよ」
真剣な眼差しで見てくる天喰先輩。
先輩から聞かされたのは信じられない内容だった。
今回の任務はとある女の子を助け出すというものだった様だが、
その任務で
通形先輩はインターン先のプロヒーロー…彼の師であるサー・ナイトアイと、個性を失ってしまった、と。
声が出なかった。
どんな顔をすればいいのかも分からない。
ヒーローになれるかは個性次第。
この世の中、それが当たり前になっている。
そんな中で個性を失ったとあればヒーローを目指すのは難しいだろう。
昔の私よりも、絶望しているんだろうな。
私には個性があるし…弱いけれど。
「…い、今のは他言無用でお願いしたいんだ…俺から話しておいてなんだけど…」
「…はい。分かりました」
立ち上がって通形先輩の病室に戻ろうと思った時、天喰先輩が思いがけない事を言った。
「あ、それから…関係無いんだけどもう一つ頼んでもいいかな」
「何ですか？」
「俺のコスチュームなんだけどボロボロになってしまったから、修繕を頼みたくて…波動さんが良ければ、なんだけど…」
「…え」
その言葉に私は固まるしかなかった。
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作者名：枝豆 | 作成日時：2020年6月13日 0時
