凪いだ心に (ページ29)

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「ん？」

そこには不思議そうな目で此方を見つめている発目ちゃんが。

「あ…！発目ちゃんお帰りなさい」

これで、発目ちゃんが接客代わってくれる筈。

「…もしかして…やっと凪先輩もコスチューム改良に手をつけるんですか？！」

「あ、いや…そういう訳じゃなくて…」

私よりも発目ちゃんの方ができるでしょう

と斜め下を向きながらそう言うと発目ちゃんはムッとした様子でこっちを見た。

「…えーと、名前分かりませんが黄色髪と赤髪の人！どちらか、凪先輩のコスチューム案受けてください」

唐突に発されたその言葉を直ぐには理解できなかった。

…凪先輩のコスチューム案…？
私の…案…私の？！

「は、発目ちゃん…！！そ、それはダメだって…」

「何がダメなんです。私そろそろ先輩のベイビー見たいですね」

「えーっと…よく分かりませんが俺、良いですよ！」

上鳴さんが手を挙げて発目ちゃんに笑いかける。

「こんな美人の先輩に作ってもらえるんなら自慢できるし！！」

その言葉を聞いた発目ちゃんは嫌そうな顔をしたあと切島さんへ向き直った。

「…そこの赤髪の人で決定ですね！」

「ええっ？！」

上鳴さんは驚いていて、切島さんは若干嬉しそうだ。

「いかにも女ったらしな人のところに私の先輩は預けられませんからね」

「発目ちゃん、私は物じゃないんだけど…」

そこからはトントン拍子で話が決まっていってしまって、私は頭を抱えた。

案って言ったって…いや、でもこれは必要な経験なんじゃ…あぁでもなぁ…。

切島さんの個性は硬化らしいから、
取り敢えず全体的なコスチュームの耐久度を上げて、少しだけ布面積を足した。

見てるこっちが恥ずかしくなるようなコスチュームだったし…個性柄仕方ないんだろうけど…。

「…うーん…私に出来るのはこの位だけど、他に要望とかは…」

「あ、いや！ないっス！！」

「そ、そうなんだ」

大した改良もしてない気がするけど、これでも申請をして後日切島さんに渡した。

初の大仕事？だったけど、私にしては上手くいった方なんじゃないだろうか。

発目ちゃんは、私に自信を出させたくて今回任せてくれたんだろうけど…優秀な後輩だなぁ。

私ももっと気を使えるようにしよう。