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ヒーロー科の職場体験も終わり、少しだけ日常が戻ってきた。
と、言っても私はサポート科だからあまり関係ないけど…。
今はお昼ご飯中で、一人で食べている。
いつもは発目ちゃんと食べるのだけど、今日はサポートアイテム作りに没頭してたから、邪魔するのも、と思い今に至る。
黙々と食べていると不意に誰かが私の隣に来た。
「あの…すみません、隣いいですか」
「あ、はい。大丈夫です…」
そう言うとその人は私から少しだけ離れた所に遠慮がちに座った。
周りを見渡してみると、沢山の生徒で溢れていて、座る席もあまり見受けられない。
ふと、隣の人の顔が気になり人目見てみようと顔を向けると、その人と目が合った。
「ぁ…」
声が重なる。
目が合った途端にふいっと目を逸らされたが、そんな事を私が気にしている暇は無かった。
紺色に近い黒髪。
尖った耳。
つり目だが少し弱々しい目。
天喰環先輩
そう認識した途端に頭の中が不安で一杯になった。
姉について何か聞かれるんじゃないか。
また、出来損ないだと笑われるんじゃないか。
彼から顔を逸らして俯くと自分の手が震えている事に気がついた。
怖い。
とても、怖い。
「えっと…」
話を切り出したのは天喰先輩の方で、私は何を言われるのかビクビクしながら言葉の続きを待った。
「な、名前、聞いても良いかな」
出てきたのは姉についての話題でも罵倒でもなく、思いもよらなかったものだった。
「波動、凪です」
名前を言ったら今度こそ、何か言われるんじゃないか、と身構えた。
「やっぱり…」
彼が呟いたのは又しても私の心配を杞憂にさせるものだった。
とは言っても、まだ気は抜けられないけど。
「波動さん…あ、三年の方なんだけど…。波動さんがよく話してるよ、君の事」
その言葉に心臓がドクンと大きく跳ねた。
姉が。
私の事を。
どんな事を言っているんだろう、どんな風に言っているのだろうという好奇心と
聞きたくない、きっと辛いものだという恐怖心が混ざ
った。
…傷つきたくない。
もう、これ以上私を責めるのはやめてくれ。
私だって、個性を選べるなら、もっと姉と肩を並べられる様なものが良かった。
…全部、私が悪いの？
とにかく、もう話しかけないでくれ。
学校でその話はしないでくれ。
そう考えている私の願いとは裏腹に天喰先輩は静かに口を開いた。
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作者名：枝豆 | 作成日時：2020年6月13日 0時
