オトナ ページ18
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「うっ……」
一歩走るごとに足首が傷んだ。
まだ、完全に治っていたわけじゃなかったから。
「おい!」
後ろからそらるさんの声。
相変わらずに声だけは綺麗で、愛おしくて、嫌になった。
「待ってよ」
「やだっ……!」
子供かって。
そう聞こえたかと思うと、腕を引かれて抱きとめられる。
「……ぐしゃぐしゃじゃん」
ほんと、酷い顔だと思う。
涙とリップが混雑して、せっかくのお化粧も台無しだなぁ。
「だって……。ほんとに、良い人だと、思ったから」
「良い人だよ。今もこうやって、助けてるじゃん」
それは私が泣いてお店に駆け込んだら大変だからでしょう?
全部の考えが最低で、そらるさんも最低で、もうなにも考えたくなかった。
歌詞さん。歌詞さんに会いたい……。
「歌詞、さんっ……」
「……誰だよ」
こんな道の真ん中で、彼は私を抱きしめ続けた。
きつく、きつく。何も考えられないほど。
ふわりと香った彼の髪の毛。体からは熱い、熱気が伝わってきた。
昨日と、同じだった。
「……職場が同じなので、これからも普通の対応にします。迷惑、かけません」
だから、離れないでください。
私、大人になりますから。
その言葉を飲み込んで、にっこりと笑うと、彼は「いいこ」と微笑んだ。
*
メイクを直して、ヒールも磨いて、身なりは完璧にした。
なんだか大人になりきれた気がした。
でも、心は子供のままだった。
大声で「かなしい」「つらい」と泣き喚いていて、いくらあやしても泣き止まなかった。
「今日、よく頑張ったな」
彼から、手に何かを握らされた。
見ると、ピンク色のあめ玉。
“御褒美”
そう言われて、まるで子供のようだと思った。
これから私は、御褒美を貰うために、頑張るの?
……それとも?
「ありがとうございます」
嬉しくもなんともない それを受け取って、ポケットの中に突っ込んだ。
バス停の文字が、滲んでなにも 見えなかった。
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そのだ(プロフ) - http://uranai.nosv.org/u.php/hp/gmmnk/ (2017年9月10日 19時) (レス) id: 103f1e7372 (このIDを非表示/違反報告)
ぜんざい大好きマン(プロフ) - ところで、みんくさん今年高校にご入学されたんですね、おめでとうございます。でもそうすると、班クソ書き始めたのって中2の時ってことになりません? (2017年8月17日 22時) (レス) id: dc0cb92ab3 (このIDを非表示/違反報告)
ぜんざい大好きマン(プロフ) - みんくさん素直に信じてTwitterでおてぃんてぃんランド開園しちゃうとか言ってたのに、カワイソウ。みんくさんの気持ちを弄ぶなんてけしからん奴じゃ。 (2017年8月17日 22時) (レス) id: dc0cb92ab3 (このIDを非表示/違反報告)
天宮みんく(プロフ) - (サブ垢の方で返信したのは間違いです) (2017年8月14日 21時) (レス) id: c59fc0c6df (このIDを非表示/違反報告)
天宮サブ垢(プロフ) - ぜんざい大好きマンさん» なるほど!そうだったんですね笑。確かに二次創作書いてる時点でオチは分かってますし内容や書き方も未熟なのでそう言われても仕方が無いですね^^* (2017年8月14日 21時) (レス) id: f92d1429d2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:天宮みんく | 作者ホームページ:@Tengu_Mink
作成日時:2017年8月4日 12時