【Ｌ】宝石箱 (ページ24)

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(番外編)もしも、あの時ページ24

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目が覚めると隣に僕がいた。僕はすやすやと寝息を立てていた。整った顔立ち、今より少し幼い表情。こいつはいくらか昔の僕だと理解した。僕が起きる。おはよう。君は誰？僕？僕は夜神月。新世界の神だ。君は？僕も夜神月。学生だ。僕は瞬時に理解した。これは夢だそれも悪夢。僕は過去の自分を見ている。ノートを拾う前の僕を見ている。僕は立ち上がった。月は薄く笑う。僕を殺すの？彼は言った。僕は困惑する。僕はこいつを殺すつもりなどないしかし振り上げた両手が宙で絡み合い今にでも月の脳天に降りかかろうとしている。僕は僕を制御する。体が意に反している。僕は殺意など微塵も持っていないはずだ。月も立ち上がる。振り上がったまま振動する僕の両手を右手で抑えた。そのまま肌が触れる。鼓動が近づく。月は僕にキスをした。挑発のつもりか。僕は明確な不快感を抱き彼を追う。彼と僕は軽やかなステップを踏む。近づかない距離。近づけない距離。僕はもどかしくなる。過去の自分を追いかける。現在から未来に行くことができないように、現在が過去を捕まえられるはずもなかった。途端過去は振り返る。僕の目を捕まえる。「ノートは拾わない方が良かったね」僕は憤怒する。激怒する。怒りで頬が引き攣っている。なぜ過去にそんなことが言える。お前は僕を何も知らない。知っているよ。君は今日から一年後に心臓麻痺で死ぬ。馬鹿なことを言うな。ほんとうだよ。それならお前はどうなんだ。悪夢だよ。君と同じように等しく悪夢だ。退屈は恐ろしいほど僕の体を蝕んでいる。多分あと一年も経たないうちに僕は食い尽くされてしまうだろう。なぜなら僕も君に追いつけないから。過去は未来に触れることができないから。つまりノートを拾っても拾わなくても悪夢だということだ。右手が取れる。液体が溢れ出す。月は驚く。しかし0.5秒後に彼の心臓にも穴が開く。僕達は死ぬ。悪夢と退屈に殺される。僕はゆっくりと目を閉じる。これが現実ではないことを祈って、隣の月にキスをした。

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