【Ｌ】宝石箱 (ページ18)

今日:9 hit、昨日:1 hit、合計:20,691 hit

ソーダに沈むページ18

.

私は昔から、深い水に沈むのが夢だった。
透明で、太陽が当たってきらきらしている場所。
そして、私は魚と一緒に泳ぐのだ。

『ソーダに沈む』

「唐突ですねぇ。」

私が長年の夢をきり出すと、彼はさも驚いたようなふりをしながら首を傾けた。
手には、麦茶。氷の代わりにキンキンに冷やした角砂糖が入っている。

「ん。前から思ってたことなんだけどね。冬だったり春だったり、季節が合わなかったから。」

クローゼットで眠っていた大きめの麦わら帽子をぼすんと被り、ひらひらと踊ってみせる。

今はちょうど良い暑さだから、Ｌと一緒に遠くの川へ出かけたかったのだ。
ここから出て、もっと広い場所に。

「今日は暑いですし、いいですね。」

魚にも会ってみたいです、と微笑んで私の手を取った。

幸い既にハンドタオルの入ったバスケットを持っていたので、そのまま車に乗ることができた。
こういう時に、気を利かせて私をエスコートしてくれる彼はなかなか紳士だ。

＊

夏の匂いのする麦わら帽子を被った、私と彼。
エアコンなんかつけずに窓を全て開けきって、風と青に触れ合う。

他愛もない話や、今流行りの音楽なんかを流しては口ずさんだりして、楽しかった。
時にはしりとり。昔に帰ったみたいでくすぐったい。

「A。見てください。」
「わぁ……！」

“りんご”の続きがこれ以上浮かばなくて困っていたころ、緑いっぱいの草原が私たちを迎えた。

手前からずっと奥まで草の1本1本が光に反射して、緑が黄色や黄緑に変わってゆく。

ざあ、と音がして風が草を靡かせた。
うっとりとして眺めていると、“揺れますよ”と肩に手を添えて、アスファルトのカーブを曲がった。