【Ｌ】宝石箱 (ページ14)

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ふたりページ14

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小鳥がさえずる声で、目をさます。

どうやら空調がなおったようで、やわらかな光が当たる部屋のなかは、過ごしやすい空間に変わっていた。

『ふたり』

タオルケットに包まれて眠るのはとても快適で、おひさまとシャンプーのいい匂いがした。
1日中寝ていたいくらいだと、布団を畳みながら思う。

「……Ｌを起こそう。」

そういえば、この前育て始めたラディッシュは元気かな。
初心者でも育てられるって聞いて始めたものだけれど。

カラカラとベランダと部屋を繋げる扉を開くと、とたんに熱風が入りこんでくる。

「あっつい……。」

お水……あげなくちゃ。
さすがに7階にもなると地面が遠くてくらくらしてくる。起きたばかりだと特に。
Ｌビルってすごいなぁ、なんて思いながらじょうろに水と砂糖を混ぜて、ラディッシュの苗にシャワーを浴びせる。

「……あ。」

まちがえた。砂糖はＬのコーヒーに入れるんだった。
あちゃーと呟いて部屋に戻る。

なかなかぱっちりと目が覚めない。
眠気のせいにしたら許されるかなぁと思って、カレンダーを捨てた。

「える、える起きて。」
「ん……。」

隣の彼の部屋にとびこんで、ゆさゆさとなかなか起きない彼を揺さぶる。

時間がもったいないよ。

早く起きて、という意味をこめて抱きつくように彼の上に乗った。

……なんの音だろう。

とくん、とくん。絶え間なく続いている。
あぁ、心臓の音だ。

私のじゃない、彼の心臓の音。
まだ、生きてることを伝える音だ。

呼吸の吸ってはく音は、海辺の波打ち際の音によく似ていてわたしを安心させた。

ざぁ、ざぁ。

寄って、返す波の音。

「ねぇ、早く起きてよ。」

私の部屋のごみ箱には、カレンダーが捨ててある。
リビングのごみ箱にも、カレンダーが捨ててある。
大きな冷蔵庫に貼ってあった、日付つきのポスターも、剥がして捨てた。

テレビも、携帯もFAXも、腕時計もデジタル時計も夕方を知らせる放送でさえも、死までの時間を告げられているようで、大嫌いだった。