□ 休憩 ページ19
side*高木
「先生、少し…」
背後から聞こえた声に振り返ると、見慣れた顔の先生が手招きをしている。
最近では週一で顔を合わすほどの仲だ。
「伊野尾くんの事で、」
高木「面談室開けます」
彼の体調の変化が著しくなってきた最近は、毎週のようにカウンセリングしてもらい治療を続けてきた。
それは主治医伝いで俺にも知らされるもので、伊野尾くんたっての希望。
「まずは彼の今の様子なんだけど、」
あの日あの場所で起きた災難と、それ以前にはなんともなかったであろう小さな悩みが合わさって不安定な状態。
今まで続けて来た治療は、それをわざと思い出させて今と比較し安心を与えるものだった。
「浮かない表情だったのを考慮して今日はやめておこうか？と声は掛けた。でも本人は首を縦に振らなくて」
トラウマがある人にとっては辛いカウンセリング。
実際に何度か立ち会ったけど、毎度嗚咽する程泣いた後ストップがかかるばかりで最後まで終えたことは無い。
「頑張るって言ってくれたからいつもの様に聞いていたけど、涙を流すのも早くて呼吸も荒くなっちゃったから途中でストップをかけた状態です」
高木「…、はい」
つい数週間前までは元の状態に戻ったと同然で、治療にも終わりの兆しが見えていたし元気だった。
何かが彼の中で切れたんだろうな、
高木「今後は、…」
「主治医としては一定期間のお休みを与えてあげて欲しい。ただ簡単な事では無いと思うから、よく相談が必要だね」
高木「分かりました」
それと、…と続けた先生の言葉を聞けば、いつも処方して頂いている薬の事だった。
今までは気分が優れない時だけ安定剤を飲む形だったものが、毎日朝晩2回に決められそれよりもっと強い薬を頓服として使うこと。
不眠の症状を訴えたらしく眠れない日は安眠剤の投与も推奨…と、渡されたビニール袋には幾つもの薬が入っていた。
「今の状態の彼にこのまま渡すのは危険だと判断させてもらった。出来る限り見守ってあげて」
高木「分かりました。」
「もし時間が無かったり手に負えなくなったら入院の方向でも考えているから、いつでも言ってね」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 339人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：みにむ | 作成日時：2022年4月2日 15時
