lonely - ひとりじゃないからね (ページ1)

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□ 見える傷と見えない病ページ1

side*高木

ピコンピコンピコン

ドキドキしない訳では無い。
異常を示す心電図の波形と鳴り響くアラーム音に、耳が慣れてしまったのは否定できないけど。

数日前に聞いたこの音は何故だか久しぶりな感覚もした。
そりゃそうか、呼ばれない限り救急には行かないし。

「え〜、ご飯行こってば！」

高木「だから書類溜まってんの。伊野尾くんもでしょ？」

伊野尾「ほんっと仕事人間なんだからぁ」

朝から後を付きまとってくる同期・伊野尾慧

就職してから…ではなく、有難いことに高校からの同級生でもあってそれほどの仲は保証する。

が、

伊野尾「じゃあさ、大ちゃんと裕翔連れてこ？」

このうざったらしさには文句を言いたくなる。
ほんっと、口から生まれてきたのかこいつは…

伊野尾「あ、そうだ。例の子うちに入院するらしいよ」

高木「担当は？」

伊野尾「有難く頂いといた」

とびっきりのスマイルとその横に持ってきたピース。

子供好きだもんな、昔から。

高木「頑張れ」

伊野尾「何言ってんの。高木もだよ」

高木「は？また勝手に…」

聞いてないし..
まったく、働くのは仕事脳だけにしろよな。

伊野尾「お土産」

高木「俺今から仮眠取るんだけど」

伊野尾「え？俺がいるのに？意味分かんない。許さない」

高木「こっちのセリフだわ」

缶コーヒーのプルタブをわざわざ開けて渡してくれた彼。
カフェインなんて取ったら寝れねぇだろ、まぁそれも作戦なんだろうけど。

伊野尾「この間行ったお店、美味しかったね」

高木「なに、その目。」

伊野尾「また行こうねってことだよ」

高木「言われなくても分かる」

上目遣いもお手の物！じゃないんだよな…。

誰だよ、デスク隣にしたやつ…まるでが仕事できない。
つーか俺らだけだぞ、こんなに書類積んであるの。

高木「期限切れてるよ、それ。」

伊野尾「昨日看護師さんに怒られた」

高木「ちゃんと出せよ」

伊野尾「無くした事にしておいた」

高木「ありましたって謝ってこい」

ったくもう…。
腕は良いのにこういう所怠る癖あるからな、

なんでか俺まで注意されるからいい加減にして欲しい。

伊野尾「でさぁ、」

高木「今度は何？」

伊野尾「新しく来る子の治療計画。立てようよ」

はぁ…
俺はいつになったら彼から解放されますか。