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夏の夜の話−hkin ページ3

side−hk
(リアル)



いのちゃんは、暗いところが好きではない。
薄暗いスタジオを少し嫌がったり、停電でパニックになったり(これは雷のせいもある)。
今も、数歩で行ける手洗いに行くために廊下の電気をしっかり付けていった。

俺は割と暗くても大丈夫だから電気代が。とか考えちゃうこともあるけど。
まあ、いのちゃんの不安が明かりを付けることで少しでも薄らぐなら、そんなの大したことじゃない。


「あ、ひかる何してんの?」
「ん?いやぁ、食べるものあるかなぁって。」
「何時だと思ってんの?太るぞ。」
「だってお腹すいちゃってさぁ。」

ネットサーフィン中にたまたまご飯の動画を見てしまって、俺の腹の虫は動き始めてしまった。

戻ってきたいのちゃんは、ぐぅ〜…っと鳴いた俺の腹に吹き出した。

「そんな、漫画みたいな、」
「しょーがないじゃん!も〜どうしよう…これ多分寝ようにも寝付けないタイプの空腹だよ。」
「…じゃあ、買いに行こ。」
「え、いいの?」
「明日休みだし、俺もお腹すいてきちゃったから。」

じゃあ行こう。と、パジャマから普段着に着替えてマスクと帽子をする。財布とスマホ、鍵を持って、お揃いのサンダルを引っかけてマンションを出た。

「うわ、真っ暗。」
「だからいいの?って聞いたのに。いのちゃん暗いところ嫌いでしょ。」
「1人じゃないなら大丈夫です〜。」
「そうなの?」
「うん。でも頼むから置いてくなよ。」
「どうしよっかな。」
「置いてったら恥も外聞も捨ててお前の名前大声で叫んでやるから。」
「勘弁して。」

こんな真夜中に記者もいないだろうと、どちらともなく手を繋いで、1番近くのコンビニまでぶらぶら歩く。
街灯は少なくはないけど、時々通り過ぎる路地を必死に見ないようにしているいのちゃんが可愛い。

「いのちゃんって、なんで暗いところ嫌いなの?」
「ん?ん〜…」
「幽霊が怖いの?」
「そ、れもあるけどぉ…」
「他にもあるんだ。」
「なんか、見えなくなるのが怖い。」
「見えなく?風景とかが?」
「それもだし、こう、自分の体との境界線がぼやけていくのが嫌。」
「へぇ〜?」

繋いでいない方の手を体の前に翳してみる。街灯と月明かりではっきり見えるそれが、見えなくなるのを想像する。
境界がなくなって、自分も闇になっていく感覚。

…やっぱり、

「分かんないなぁ。」
「ひかるは暗いとこ平気だもんね。」
「平気だね。」
「俺はそれが分かんないなぁ。」
「まあ、そんなもんだよ。」




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しろみ(プロフ) - おこげさん» 嬉しいです〜!こちらこそ読んでいただいてありがとうございます!! (2022年2月1日 23時) (レス) @page9 id: a728324ea6 (このIDを非表示/違反報告)
おこげ(プロフ) - hkinが大好きなのですが、どのお話も素敵でニコニコしながら読ませて頂きました!素敵なお話をありがとうございます! (2022年1月29日 18時) (レス) id: ec6c8a8fda (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:しろみ | 作成日時:2021年11月29日 13時

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