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「…いのちゃん、ごめん」
「…っ、」
暗い声色と与えて貰えない温もりに、あぁダメなんだと思った。
じゃあ夢であんなに言ってくれた大好きは何だったんだ。笑顔は何だったんだ。
これじゃあ舞い上がって1人で暴走しただけじゃないか。
「、なんで、」
「ごめんね。ずっと素直になれなくて」
「…へっ?」
「いのちゃん」
名前を呼ばれて顔を上げる。
視界に映るひかるは、夢と同じ顔をしていた。
「俺も、いのちゃんのこと大好きだよ」
「…ほ、ほんと?」
「ほんと」
「っ、ほんとぉ?」
「ほんと。だから泣かないで」
「ひかるっ、おれのこと、すき?」
「好きだよ。大好き。いのちゃんは?」
「おれも、おれもひかるだいすき」
そこまで言って、ぼろぼろと零れる涙を自分の袖で押さえていると、ぎゅっと抱き締められる感覚。
夢と同じだけど、全然違う。
現実だと、こんなに暖かい。
夢みたいだ。
「ずっと言えなくてごめん。俺の恋人になってくれる?」
「っ、なる、ひかるだいすき」
「うん、ありがとう。俺もいのちゃん大好き」
夢で見たような場所じゃないけど。あんなオシャレなソファもないラジオ収録の楽屋だけど。
ずっと夢に見た幸せを、今やっと手に入れることが出来た。
顔を見合わせて、そっと唇を合わせて、笑い合う。
夢みたいな、夢にまで見た現実。
あれからもう、二人ともあの夢は見ていない。
夢の話_fin.
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しろみ(プロフ) - おこげさん» 嬉しいです〜!こちらこそ読んでいただいてありがとうございます!! (2022年2月1日 23時) (レス) @page9 id: a728324ea6 (このIDを非表示/違反報告)
おこげ(プロフ) - hkinが大好きなのですが、どのお話も素敵でニコニコしながら読ませて頂きました!素敵なお話をありがとうございます! (2022年1月29日 18時) (レス) id: ec6c8a8fda (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:しろみ | 作成日時:2021年11月29日 13時