みにまむ ６１ ページ21
助けを呼ぼうにも、何処にも声が届かない。
そう思っているだろ、姉さん？
じわじわと、じわじわと……俺の苦しみを味わってくれよ。
・・・・・・
俺と姉さんは二卵性双生児としてこの世に生を受けた。
好きな食べ物も同じ、好きな色も同じ、そして嫌いなものまで全部同じだった。
ただ一つ違うところといえば、俺は生まれながらの金髪に反して姉さんは黒髪だったところか。
気に食わないこともあったが、なんとかのりこえて俺はやってきたつもりだった。
なのに。
俺
頑張ったのに。
『Aが起きたって！』
「ねえ、母さん。おれね、テストで…」
『とりあえず事情くらいは聞けるか！？』
「ねえ、父さん。おれね、運動会で…」
俺のことなんか見ちゃあいなかった。
それに、いくら頑張ったって姉さんの成績には手が届かなかった。
どんなものでも拡大・縮小できる姉さんとは違って、
俺は物語を書くだなんていう没個性だった。
時間もかかるし、もともと要領が悪かったからずっとずっと不便だった。
「…っへ、よく考えたらおれ……昔から姉さんばっかでなんにも注目されてなかったな」
あ〜あ、気付いちゃった。
それでも無駄に八方美人を演じようとしていた俺は、姉さんの前でも友人と接するように。
持ち前の演技力で今まで姉さんをだましてこられた。
ほら、なぁ。
早く懺悔してくれよ。
・・・・・・
「姉さん…姉さん！！！俺の一部になってくれよ！姉さんの分の能力、全部俺にちょーだい！！」
「綴ぃ！！落ち着いてよ！そんなことしても意味無いの、賢いアンタなら分かるでしょ！」
もうこの家は崩壊寸前に近い状態だ。
だが、これは俺が作った仮想世界。物語の筋書きを辿っているだけにすぎない。
「残念だが、俺の勝利はもう確定してるからなぁ…？」
ちょーだい。姉さんの全部。
ね、いいでしょ？可愛い可愛い弟からのお願いじゃん
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作者名：真裏 | 作成日時：2017年11月11日 0時
