距離感【稲荷崎】

（２８）策士な君は読めない ページ29

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ふと空を見上げるとふわふわと漂う雲たちが目に入る




『雲の中に突っ込みたい』


「え、急になに」





思ったことを口に出せば笑われた


え、雲の中に囲まれたら絶対ふわふわで気持ち良さげじゃない？夢に思わない？



あーだこーだと角名くんに説明してると、「雲の中に入っても突き抜けて直ぐに落ちちゃうよ」と正論を頂きました。いや北さんか。





「ハァー…やっぱり面白いね」

『え、雲が？』


「オッホホ、さぁどうだろう」

『なんじゃそりゃ』




雲が面白いとはなんぞ？

策士な君の考えがわからん…！！





「ねー遠野さん」


『なんだね角名くん』




雲の良さに気づいたのかと顔を向ければ、思ってたのと全然違う言葉がきた





「Aって下の名前で呼んでいい？俺の事も呼び捨てでいいから」






『………ほ？』







ど う し て そ う な っ た





「だめ？」


『ア、だめじゃ、ナイデス』


「じゃあAね」





…どうしてこの横のイケメンはそんなに距離の詰め方がうまいのか。誰か教えてくれ。



首を傾げて「だめ？」とか聞かれたら否定できないよね。うん。無理。






「ほら、Aも俺の事下の名前で呼んでみてよ」


『え、今？』


「うん」






じーっと見てくるチベットスナギツネめ





 





だが、私の心の中では謎のプライドが仕事をしている！！！！






今まで距離感を取ってきた私





ここで易々と名前を呼んでいいものなのか

モブの距離感はどこへ行った(おそらくすでに皆無)




 




今ここで回避しなければ…！！





(この状況を打破するには！！なにか、なにか探せ、探せ私！)




ぐるぐると渦巻きが出来るくらいに考え巡ってたどり着いた答え






それは







『すなりん！』




「…え？」



『すなりんって呼んでいい？』









"すなりん"







私が出した答えは親しみ感がある呼び方！！！







"倫太郎"、とそのまま呼び捨ては絶対的にダメだ！


その呼び方で呼んでいいのはどこかのヒロイン、それか彼女！！または親！！！そしてバレー仲間たち！！！





その一線を超えては行けない私！！！





『すなりんって呼びやすいし、呼び捨ては…そうだなー、言いたい時に言う！』









作戦名：あだ名で呼び捨てを回避せよ









『いいでしょー？』


「…うん、まあいっか」








いよっっっし！！！！


すなりんって友達感漂うしセーフだセーフ。




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