(32)会いたかった ページ34
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Aと七海が血まみれで帰ってきたことは、瞬く間に高専内に広がった
家入の治療で2人の傷は癒えたが、重症だったAはまだ目が覚めずにぐっすりと眠ったままだった
七海はあの衝撃波で脳震盪を起こしていたのだが、今ではすっかりと回復していた
Aの見舞いにきた人よって、窓際が花や果物で美しく彩られていく
その傍らで、伏黒は椅子に腰をかけて、眠る横顔を静かに見つめていた
「先輩、いつ起きるんですか」
そう声をかけても反応は無い
「耳の鼓膜破れてたって、家入さんから聞きました。でも治ったということも聞いたので、…俺の声聞こえてますよね
…早く、起きてくださいよ」
細く小さな指に大きな手を重ねて、そう呟いた
それでも、やはり反応は返ってこなかった
また明日来ようと、席を立って手を離しかけた
そのとき
『……め、ぐみ…』
枯れた声で、小さな手で、伏黒を引き止めた
伏黒は目を見開き、うっすらと開いたAの瞳を覗き込んだ
「っ!…おはようございます。寝坊ですよ」
『ふ、ふふっ、……おはよう』
Aはゆっくりと握った伏黒の手を自分の頬へと近づけていく
『……会いたかった』
そう溢れ出た言葉は、伏黒が理解するのに少しばかり時間がいる言葉で。
「………え、」
「────あ、A。起きたのか」
ガチャリと開いたドアから顔を見せたのは家入で、片手には報告書の山々が。
それを見たAは反射的に反応して体を起こそうとする
『…しょう、こさん。仕事、手伝いま──』
「アホか。今のAに仕事任せたら上司のメンツが立たねーよ。治ったら全部押し付けてやるからな」
『ふふ、任せてくださ、…ケホッ』
「ほら、水飲め」
伏黒は、家入に診るから出ていけと言われたため素直に外に出る
けれど、自然と解けた手を、伏黒は名残り惜しそうに見つめていた
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ほやっく(プロフ) - souさん» コメント嬉しいです〜!!読んでくださりありがとうございました!!! (2022年1月23日 10時) (レス) id: f8046942e5 (このIDを非表示/違反報告)
sou(プロフ) - 完結おめでとうございます!お疲れ様です!私も恵くん大好きなのでオチが恵くんでとっても嬉しかったです!! (2022年1月22日 21時) (レス) @page40 id: 26a665cc7a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ほやっく | 作成日時:2021年3月3日 19時