不治の病を患った少女の賢明な時間【暗殺教室】 (ページ33)

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８１話ページ33

峰刃リンヤside

「人はいう。逆境とは辛いものだと。でも僕は思う。本当につらいのは逆境がないことだと」

「冷やかしに来たなら帰ってくれ。一般人は死ぬぞ」

必死に瓦礫を持ち上げている烏先生の背中の瓦礫を向こう側へ倒すのを手伝う。

「人は死ぬものだよ？それが普通さ」

僕の妻ちゃんのようにね。

「それに基本的に人は誰だって一般人さ。君らを含めてね」

「本当に何しに来たのよアンタ……」

何をしにって意外と普通な答えだね。
そんなの一つだけに決まってるじゃないか。

「娘ちゃんの敵を潰しに、かな」

ちょっとだけ殺気まじりに言えば、二人の背筋が凍ったのがわかった。
ふふ、これでこそ思うよ。一番感情を読みずらいのは僕の娘ちゃんだってね。
二人にお別れを告げ、制御室へと向かう途中、彼はいた。
『死神』か。死に怯える恵まれた人間が付けた揶揄にしか聞こえないけど。

「『人魚(マーメイド)』……」

「よしてくれよ。もう僕は引退したんだ。今はただの世界中を旅する変わり者さ」

『死神』は警戒しながら近づいてくる。

「読心術に優れた僕が編み出した結果、君はどうやら自分のスキルを試したくて仕方ないらしい。
なら、他の先生の代わりに僕が相手をしてあげよう。
試すゲームはシンプルに―――」

『死神』の腕をつかんで、遠くの瓦礫を突っ切って突き落す。

「格闘術、何ていいと思うんだ」

続いて僕も飛び降りる。
さあ、遊ぼうか『死神』。
娘ちゃんの寿命(タイムリミット)が迫るまで。