７９話 ページ31
「みなさん……ここは……」
「洪水対策で国が作った地下放水路さ。ひそかに僕のアジトと繋げておいた。
地上にある操作室から指示を出せば、近くの川から毎秒２００ｔの水がこの水路一杯に流れ込む。
その恐るべき水圧は君の身体から自由を奪い、対先生物質の頑丈な檻に押し付けられ、ところてん上にばらばらになるって寸法さ」
……！！
洒落にならない。けど冗談じゃない。
「へえ……」
血管が浮き上がっている。
「誰だ？」
そう言えば今来た二人は知らないんだったね。
「これだから若い子は困るなァ。話はちゃんと訊くべきだよ？
一体誰が？ 君程度が？ 君なんかが、娘ちゃんの生死に関わりがあるって？ 君は娘ちゃんの人生に関わっていいわけがないね。うん、あははは」
ガンという鈍い音と共に死神の頭蓋骨を掴んで檻に叩きつけた。
「がぁ……！？」
これにはたまらず死神も嗚咽を漏らす。
「人はいつか死ぬ。でも『人魚喰らい』を殺していいのは『死神』じゃないんだよ？」
ダメだ。完全に頭にきてる。
(思った以上に隙がない……。これが元最強の殺し屋『人魚(マーメイド)』か。
常識外れだな。今回の仕事は)
「『死神』。君に選ばせてあげよう。
このまま頭蓋骨を握りつぶされるか。ぜーんぶ臓器を抜き取られるか。
選択は権利じゃなくて義務だ。選べ」
「そうかななら……君を振り切って水を流すことにするよ」
銃声が二人の間を駆け巡った。
一瞬、峰刃さんがひるんだすきに死神は逃走。
「チ……」
死神を追って、烏間先生は駆け出した。
「ふん、彼を倒そうなんて無謀ね」
「どうかな。この世に不可能はないんだよ？ 意外とね」
「確かに『人魚(マーメイド)』もカラスマも人間離れしてるけど、『死神』はそれ以上。このタコですら簡単にとらえたのよ」
「あぁそうかもね。でも君は大したことないなァ」
第一印象が良いAさんと違って峰刃さんって第一印象を悪くするのに生き甲斐でも感じてるのかな？
「何ですって？」
「必死に冷酷な殺し屋アピールを続けてる姿を見てると滑稽だよ？
この国は緩いからその空気が伝染しちゃったのかな？
今でもほら、彼らを殺すのに迷いを感じてる」
「アンタに何がわかるのよ！？」
ビッチ先生は激昂する。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 5人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
