６４話 ページ16
片岡メグside
椚ヶ丘総合病院。
この日本で最大級と言ってもいいほどの巨大な病院。
数十年前はここまで大きくなかったらしいけど、とにかく今は国内随一を争うほど大きな病院。
私は、体育祭の後、磯貝君たち数人と共にAちゃんのお見舞いに来ている。
カルマくんまで来るのは予想外だけど……。
前に来たときは、面会謝絶で会えなかったしな。体育祭での勝利報告と共に景気づけよ！
浅野君の言った通り、病院側に話はされていた。どうやらAちゃんの入院しているフロアは親族以外立ち入り禁止らしい。そんなに重い病気なのかな？
「ぅあッ……」
この病院の最上階にして最重篤患者の入院するフロア。
なんていうか空気がとてつもなく重い。異常なまでの白さと充満する薬品の匂いがより一層空気を重くさせる。
「えーっとAちゃんの部屋は……」
０００８４号室と書かれた部屋を見つける。うん、ここだ。
「おじゃまし――――――」
「ヌルフフフ、ここまで完膚なきまでに叩きのめされたのは初めてですよ」
病室に入ってみれば、まず黄色い巨大なタコが目に留まった。
あ、殺せんせーか。うんそうよね。殺せんせーよね。
「「「「って、何でいんだよ！！？」」」」
「にゅにゃあっ！ みなさん！」
流石にここで銃やナイフを使うわけにはいかない。
大声を上げたことでいつも大きな目をさらに大きく丸く開いてこちらをAが見つめてきた。
『いらっしゃいです！』
数日前に来たときよりちょっと顔色が悪いけど、目をキラキラさせて嬉しそうに手話をする。
ビッチ先生にちょっとだけ教わったので少しならわかる。
「殺せんせー何してんだよ。ここ、親族以外は普通は立ち入り禁止だぜ」
「窓から入りました。病院の方にはばれない様にしています」
つまりは不法侵入ですか。
呆れて目を逸らせば、本棚に『帝王学入門』とかかれた本が目に入った。
あの親子の趣味か。似なくてよかったわ。本当に。
「Aちゃん、体育祭。無事勝ったよ！」
Vサインを作れば、『本当ですか！？』と顔に出して喜んでくれた。
『大丈夫ですか？ 怪我とかしてないですか？』
「大丈夫大丈夫、作戦通り圧勝だったよ」
『それはなによりです』
自分の身内が敵側で複雑なはずなのにこうして私達のことを案じてくれる。
こういう優しいところがまた可愛いんだよなぁ。
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