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人混みにまぎれそうだったA腕のを掴んで引き止めるが、Aは振り向かない。

熊「おい、こっち向けよ…。」

熊谷が言った後ゆっくり振り向くが、その目からは未だ涙が止まらない。

泣かせたい訳じゃ無いのに、困らせたい訳じゃ無いのにどうしてこうなったんだと、熊谷は眉間に皺を寄せる。

『…っめ、なさ、』

熊「…何だ?」

『ごめんな、さいっ…嘘をつくつもりはなかったのっ……ただっ…』

熊「…ん。」

『…裏道さんと会うって、言いづらかったの…。裏道さんは悪く無いから、だからっ…!』

熊「…っ!!!」

「裏道」と名前が出た瞬間、もう我慢が出来なかった。
そのまま思いっきり腕を引っ張り、Aを抱きしめた。

『…!?熊谷く、』

熊「好きなんだよ…っ!!」

Aを抱きしめる腕に力がこもる。

『…な、』

熊「好きだから、Aから他の男の名前なんて聞きたくねぇんだよ!!」

往来で抱きしめられられ、熊谷からも告白され恥ずかしいしドキドキして固まってしまう。

熊「……お前は、好きな奴いるのか?」

『…え?』


そう聞かれて、浮かんだのは

『 』


熊「……なぁ、」


ふと、自分を抱きしめる力が緩んだ時に思いっきり熊谷を突き放す。

『〜〜っ、いきなり告白されたり、抱きしめられたり、好きな人聞かれても答えられる訳無いじゃない!バカ!!』

熊「……なっ!!」

『ついてこないで!!』

そう言ってAは熊谷が呼び止める声も聞かず街中を走り出した。


———

——





どれくらい走っただろうか。
もう走れないと思い足を止めた。行く当ても無くがむしゃらに走った後息を整えていると、スマホから着信音が聞こえてきた。

ディスプレイには"多田野詩乃"と書いてある。
半分無意識に通話ボタンを押した。

詩〈あっもしもしAちゃん?今大丈夫?〉

『う…うたの、さん…。』

詩乃の声に安心したのか、また涙腺が緩む。

詩〈ちょっと、もしかして泣いてる?どうしたの?何があったの!?〉

『詩乃さん…どうしよ…』

詩〈Aちゃん今どこ!?今から行くから動かないで!それかどこかのお店に入ってて!ね?〉

『…分かりました。えっと…近くにカフェあるのでそこに居ます。地図…送ります。』

詩「オッケー!何があったか分からないけど、お姉さんが行くから安心なさい!それじゃまた後でね!」

通話が終わった後、Aは1人カフェに入って行った。

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作者名:水無月(みなづき) | 作成日時:2023年10月14日 12時

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