: ページ47
.
『あっ、あの、そのっ…〜〜っす、すみません…。』
裏「っ、それは、」
その一言に、胸がズキンと痛くなる。
『その、う、嬉しいんですけど、まだ頭がまとまらなくて…ちょっとだけ、時間を下さい…。』
真っ赤な顔を両手で押さえながら裏道を見上げるA。
裏「…………えっと…うん。」
Aの肩からするっと手を離して、仄暗い目をしながらぐるぐると自分のした事を考えている。
裏(嬉しい…？嬉しいって言ったよな？少なくとも嫌われては無いのか…？)
わたわたしているAの姿を裏道かじっと見つめるという、側から見ればちょっと変な2人の間にガランっとけたたましくカフェのドアが開く音がした。
熊「…Aっ！！！」
呼ばれたAの肩がビクッと跳ねた。
そのまま恐る恐る顔を上げると、明らかに怒りを滲ませた熊谷が立っていた。
裏「熊谷？」
『……熊谷君っ…なんでここに…』
熊「何ではこっちの台詞だ。今日は姉さん達と会うんじゃなかったのかよ。」
『…っ、それ、はっ』
青ざめた顔をしながら熊谷の方を向く。
自分には、そんな顔しかしてもらえないのかと嫉妬の炎が燃え上がる。
熊「……俺に嘘をついてまで、裏道さんと会いたかったのかよ。」
『それは違うよ！』
熊「じゃあ何で一緒にいるんだよっ！！！」
Aの肩を掴んで自分の方に向かせようとした瞬間、裏道が熊谷の腕を掴む。
裏「熊谷、やめろ。」
熊「裏道さんには関係ないですから。」
裏「関係ある。俺が呼んだんだ。」
熊「…は？裏道さんが？」
熊谷の動きと怒声がピタリと止まる。
裏「そうだ。俺が無理を言って今日来てもらったんだ。だから文句があるなら俺に言え。」
Aを見ると、震えながら無言で俯いていた。
その姿に胸が痛むが、どうしても本人から聞かなければ気が済まなかった。
熊「……A、本当なのか。」
裏「おい、熊谷っ！」
『…………っ、…ごめんっ。』
Aはガタンとその場で立ち上がると、熊谷の方を見上げた。その目には沢山の涙を溢しながら。
『私が悪いの。熊谷君から声をかけられた時に、本当の事言えなくてっ……ごめんなさいっ…！』
バッグを手に取り、裏道と熊谷の間をすり抜けて店の外へ出ようとするA。
熊「あ、…おい！Aっ！！」
慌てて後を追いかける熊谷。店の外に出ると、人混みに紛れようとしたAの腕を掴む。
熊「なんで逃げるんだよっ……！」
2024.4.7…一部加筆修正
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 14人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：水無月(みなづき) | 作成日時：2023年10月14日 12時
