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声を出そうとして、ひゅっと息を呑んだ。
Aは膝の上でぐっと手を握る。
『……裏道さんには何でもお見通しですね。』
裏「…何となく。……無神経でごめん。」
困ったように笑う顔を見ると、自分が無意識にAの隠し事を暴いてしまった事に罪悪感が生まれる。
『そんな事無いですよ。…今日話そうと思っていた事ですから。』
最近Aの心境に変化があった。
それは裏道が自分を心配してくれる事に安心したり嬉しくなったりするのだ。今までも自分を気遣ってくれていたのは知っているが、直接「心配している」と言われてから尚の事、その気持ちが大きくなっている。
(胸がほっとして温かい…どうして嬉しくなるんだろう。どうして裏道さんだけ…なんだろう。)
握った手の力がふっと緩む。
『………確かに、彩色先輩から嬉しくない事をされています。彩色さんの仕事をやってと渡されたり……その、苗字でからかわれたり…とか。』
裏「苗字?」
『…私って仕事をこなすの人より早くなくて、よくアナウンス部でも走り回っていたんです。で、苗字が
裏「そんな事無いから。」
Aの言葉を遮った裏道の声は怒気を含んだ声だった。
裏「仕事に時間がかかっているのはそれだけ丁寧にしてくれてるし、締切を破った事なんて無い。走り回っているのは色々な所に目配りしてくれてる。だから出木田さんの無茶振りにも仕事がスムーズに進むし、皆助かってる。それに………何で笑ってんの?」
『へ、笑ってます?』
裏「………うん。」
眉間に皺を寄せながらつらつらと淀みなく言葉が出てくるその姿につい、我慢していた嬉しさが込み上げてきてしまって自然と頬が緩んでいたのだ。
『す、すみません。裏道さんがそんなに見ていてくれてたんだなって思ったら嬉しくなってしまいました。』
へへっと照れながらAの笑う姿に、自分が何を言ったのか思い出して顔が熱くなったのか少し背ける。
裏(…そりゃ、そうだろ。)
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作者名:水無月(みなづき) | 作成日時:2023年10月14日 12時