デート、しませんか? ページ41
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お正月も過ぎて街中は人の波が減ったように思えたが、週末は相変わらずの人混みだった。
約束した場所に着くと、スマホを見る。
(思ったより早く着いちゃったな。)
Aはぼんやりと空を眺めながら、待ち合わせ場所に立っていた。
『今日は晴れたなぁ…。』
裏「Aさん!」
少し遠くで呼ばれた気がして、見上げていた顔を声がした方へ向ける。
キョロキョロと辺りを見回すと、見慣れた人が見慣れない服を着てこちらへ歩いて来た。
裏「ごめん、待たせた?」
『……。』
裏「…?じっと見て、何?どこか変?」
はっと、意識を戻す。
『…ああ、すみません。今来た所ですよ。裏道さんの服装があまり見慣れ無いなぁとじっくり見ちゃいました。』
今日の裏道さんは会社に来る時のようなカジュアルな服装ではなく、ロングコートにきれいめなコーディネートの服装だった。
裏「…まぁ、ね。Aさんこそ普段と違うよな?」
『服ですか?そうですね。だって"デート"ですから。』
今日はコートとチャコールグレーのトップスにワインレッドのAラインスカートと可愛らしい服装にしっかりメイクもしている。にっこりと微笑むAに、ついうっと怯む裏道。
『どうしました?』
裏「……………あー……その、似合って、る。」
空を仰ぎながらちらりと目線だけAに向ける。
『!、ありがとうございます。裏道さんも格好いいですよ!素敵です!』
屈託の無い微笑みがくすぐったく感じて裏道はAの頭をくしゃりと撫でる。
裏「……そーかよ、じゃ、行くか。」
柔らかく笑う裏道の後ろについて行く。
(いつものように話せているだろうか。)
裏(俺、いつも通りだよな。)
(いつものように笑っているだろうか。)
裏(Aさんの笑顔は変わらないんだな…。)
(裏道さんの手は変わらず優しいな。)
この優しく、少し甘いような空気をあともう少しだけは許して欲しいと互いに願った。
今日はデートを楽しむ訳ではなく
今までの事を話そうと決めてここに来たのだから。
———
——
———2日前。
夜23:00。裏道の部屋に着信音が鳴る。
すでに入浴も済ませて1人晩酌をしながら面白くも無いテレビをつけていた。
どうせ兎原から飲みに行かないかという電話だろ、と気怠げにスマホへ手を伸ばすと全く違う人物からの連絡だ。
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作者名:水無月(みなづき) | 作成日時:2023年10月14日 12時