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熊「あの女…っ!気色悪ぃにも程があんだろっ…!」

静かに目が座り臨戦体制の熊谷とは正反対に、詩乃は冷静だった。

詩「私も同意見だわ。あれは完全にイケメン目当ての女ね。あの猫なで声が最悪。まったく…自分の顔鏡で見た事あるのかしら。」

熊「Aの事馬鹿にしやがって…。」

詩「そうね…。とりあえずうらみちお兄さんが何か知ってそうだから戻ってきたら聞いてみますか。ね?」

熊「……分かりました。」

熊谷はそう言うと、いつもの待合室とは別の方向に歩いて行った。


***


ふと目が覚めると、見覚えのない天井が見えた。

『あれ…どこだろ?』

裏「…目が覚めた?」

声がした方に目を向けると、裏道さんが横に座っていた。

『うらみちさん…?』

裏「ここ医務室。…連れてきたの覚えてる?」

ぼんやりした頭で考えると、さっき高見野部長と彩色先輩の話を聞いて苦しくなったのを思い出した。

『あ……はい。』

裏「具合はどう?」

『少し怠いけど、苦しさは無くなったので大丈夫です。』

裏「そう…良かった。」

裏道はほっとした様子で、Aの頭をさらりと撫でる。

裏「Aさん、出来田さんには具合が悪いって伝えておいたから今日は家に帰って休んだ方が良い。」

『…でも、まだ仕事が』

裏「駄目。普段から人より仕事してるんだから不調の時くらいは休んで。」

Aを遮りながら話す裏道は眉間に皺を寄せて複雑そうな顔をしている。

裏「それと、明日は休みを取ってあるからって高見野さんからも言われてる。」

『部長から…?』

裏「そ、皆Aさんの事が心配なんだよ。」

『………裏道さんもですか?』

裏道が驚いたように目をぱちくりとさせた姿を見て、
Aはなんでそんな事聞いたのか後悔してしまった。

『あはは…何言ってんだろ。すみません。』

裏「…心配してる。当たり前だろ。」

『……え?』

わしゃわしゃとAの頭を撫でると、ちょっと困ったように笑う。

裏「俺も含めて心配してるんだから、休む事。良い?」

『…はい。』

裏「そしたら荷物とかはうたのお姉さんが持って来てくれるみたいだから声かけてくる。それまで横になってろよ。」

『…分かりました。裏道さん、ありがとうございます。』

裏「どーいたしまして。」

そう言って後ろを向きながらひらひらと手を振ると、裏道は医務室から静かに出ていった。

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作者名:水無月(みなづき) | 作成日時:2023年10月14日 12時

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