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『……ぁ、く、またにくん…?』
詩「Aちゃん!?私の声聞こえる!?」
『ぅ……たのさ…ごめ、な』
そうだ、ここにはこの人達がいる。
だから大丈夫、大丈夫なのに。
熊「そんなの気にしてる場合か!とりあえず息吸えるか?!」
息?あれ、わたし、どうやって息なんて
怖い、苦しくて涙が出てくる、どうしよう
『げほっ、…はっ、』
裏「A。」
———あ、この声、は
熊「裏道さん、なんで、」
裏「…ここで騒いでたら聞こえるだろ。」
『…うら、みち、さ』
裏道さんは私の隣に屈んでくれた。
裏「話さなくて大丈夫だから。ほら、ハンカチで少し口を覆えるか?」
差し出されたハンカチをゆっくり口に充てる。
———あぁ、知ってる香りだ。
裏「ん、それでゆっくりで良いから息吸って…そう、少しずつで良いから吐き出して。」
さっきまで冷たかった背中が温かい。
裏道さんの手、なのかな。
裏「上手いな。そう、またゆっくり吸って…。」
そうだ、確か息ってこういう風にしてたよね。
なんで分からなかったのかな…
なんだか頭までぼんやりしてきた….
裏「……落ち着いてきたな。そのままゆっくり呼吸しとけよ?今から医務室連れてくからな。」
『ご、めんなさっ、い…』
裏「何に謝ってんだよ。ほら、つかまれるか?」
ゆっくり見上げると、優しく笑う裏道さんが居た。その微笑みにさっきまでの恐怖が和らいで、また涙が込み上げてくる。
『っ、ひっく、うん…』
裏道さんが私の手を取り首に回す。私はもう片方の手をなんとか掴んで裏道さんに寄りかかった。
しっかりつかまったのを確認したら、私の背中と膝下に手を入れてゆっくり立ち上がる裏道さん。
裏「熊谷、悪いけど後頼むな。」
熊「……分かりました。」
裏「うたのお姉さんも、お願いします。」
詩「任せて!相手には私から伝えておくから。Aちゃんはゆっくり休んでね!」
『ありがと…ござ、います。』
裏「A、少し休めるなら寝とけ。」
『ん…はぃ…。』
まぶたを閉じると、優しい裏道さんの香りと温かさに私はそのまま眠ってしまった。
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作者名:水無月(みなづき) | 作成日時:2023年10月14日 12時