小さな嘘 ページ29
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夢主視点
※過呼吸描写有ご注意下さい
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『裏道さんは力加減を考えて欲しいよ…。』
熊「何を今さら。」
『そうだよねぇ…。所で熊谷くんは休憩?』
不思議そうに首を傾げるA。
熊「そうだ。それと、Aを探してた。」
『私?何か仕事で引き継ぐの忘れたっけ?』
熊「いや………違う。」
少し口籠る熊谷くん。らしくない姿に私は何か相談事だろうかと心配になった。キョロキョロと周りを気にしながら意を決したように私を見ると、口を開く。
熊「………2人で出かけられる日、あるか?」
『……………あ、ごめん!!』
仕事が始まって確認すると連絡していた事をすっかり忘れていた。
熊「いや、忙しそうだったし良いんだ。」
『いやいやいや、私が悪いよ!ごめんね!えっと…ちょっと待ってね。今確認するから。』
スマホを慌てて取り出してカレンダーを見る。今週末には既に裏道さんとの約束が入っているので、1番早くても来週になってしまう。
熊「…今週末とか難しいか?」
『え、と…』
熊「どうした?」
『ご、ごめん…今週末は…その、詩乃さん達とご飯食べに行く約束してて…。来週なら空いてるんだけど…。』
何となくだけど、熊谷の雰囲気から"今週末は裏道と予定がある"とは言い辛くてつい嘘を口走ってしまった。
(…なんで咄嗟に嘘なんて付いたんだろう?)
熊「あぁ、それなら仕方ないな。そしたら来週の日曜日とかどうだ?」
『う、うん。それなら大丈夫。ごめんね、遅くなっちゃって…。』
熊「別に気にするな。いつも仕事ばっかり抱えてるだろ?そこまで無理させるつもりは無ぇよ。」
ぽんぽんと優しく頭を撫でてくれる熊谷くんに罪悪感で胸がズキズキした。
詩「あっ熊谷君!Aちゃんこの辺で見かけなかった?」
『う、詩乃さん?どうしました?』
詩「あ!良かった〜!今ね、アナウンス部からAちゃんの上司と先輩が来てるんだけど、Aちゃんを呼んで欲しいって言われたの。来てもらっても良いかな?」
"先輩"、と聞いて心臓が思いっきり掴まれたように痛んだ。
『え……ど、ど…して?』
息が上手くできなくなってくる。
どうして?
部長と一緒ってなんで?
……私があんな事言ったから?
「…ぃ、……ぉぃ…!おい!A!!」
『……っ!?』
熊「A!俺の声が聞こえるか!?」
足元がふらついて屈んでしまう。
ぐらぐらする頭に響いてきたのは、今までに無いくらい熊谷くんの焦った声だった。
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作者名:水無月(みなづき) | 作成日時:2023年10月14日 12時