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自分の前を歩く裏道はどこと無く沈んでいるように
見えた。裏道が何か言う訳では無いのだが、何となく感情の起伏が伝わってくるのだ。
(前はピリピリしてたけど今日は随分と落ち込んでる…?
また出来田さんに無茶振りでもされたのかな。)
『うら…』
裏「…木角さんにいつもあんな事されても許してるの?」
裏道は振り返らずそのまま話しかけた。
『え?………えーと?頭撫でたりとかは初めてですよ?』
裏「そうじゃなくて、あんな風に抱きつかれて何も思わないのかよ?」
『………うーん。』
裏「…何でそこで悩むの。」
『え、だって何とも思ってないですから。そりゃあお互い社畜同士頑張ろー!みたいな気持ちはありますけど…それ以外は何も無いですし…。』
裏道は脚を止めて、急に後ろへ振り返えるとがしりと
Aの両肩を掴んだ。
裏「ならそんな事させちゃいけません。男は単純で勘違いするって何回言えば覚えるんだ?」
『え…でも、』
裏「"でも"も"だって"も受け付けません!……猫田の時の二の舞になりたい?」
『えと、それは……。』
猫田、と言われて思い出したのはバー「CAT KICK」の帰り道だった。裏道からされた事を思い出して自然と顔が熱くなる。
裏「………。俺が言ったのは猫田にされた事であって、その帰り道じゃないんだけど。」
『!?!?…ちょっ!それ早く言ってっ!!っ…何!顔、見ないでください!!』
裏「1人で勝手になぁに思い出したのかなぁ〜?お兄さんにも言えない事?」
Aの反応に、裏道は真面目なお母さんから一転、意地悪な顔をしたお兄さんが出て来た。
熊「2人ともここで何してるんですか。」
不機嫌そうな熊谷の声に振り向く裏道。そのすぐ後ろにAが居たが、裏道から頬を引っ張られていた。
熊「……マジで何してんすか。」
裏「Aさんが男に無防備過ぎるから注意してただけだよ。」
熊「A…お前は気をつけないと駄目だろ?色々と。」
裏「そ、熊谷もああ言ってる事だし気をつけないと駄目だよ?分かった?」
『……ふぁい。』
少々不服そうに頬をぐいっと引っ張られな頷くA。裏道は満足したのか手を離すと頭をぽんぽんと撫でた。
裏「じゃ、あと出来田さんの所に行けよ。」
『はぁ〜い。分かりましたぁ。』
頬を撫でながら不満そうな返事が返ってくると、裏道はそのまま控え室に戻った。
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作者名:水無月(みなづき) | 作成日時:2023年10月14日 12時