所変わって ページ24
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ここはMHKエンタープライズ・デジタル企画部の一室。
カチャカチャと規則正しくキーボードを打つ音が響く中、この場所とは似つかわしくない可愛らしい音楽と声が響いている。
『やっぱり一期のオープニング良いですよねぇ。このキラキラな感じがのちのオープニング詐欺になるなんて…。』
上「はい。最初の5話目までは王道の魔法少女でしたが、6話目のステラ覚醒シーンから不穏な空気が流れましたよね。」
Aと上武はそれぞれ両隣のデスクに座り、お互いの間にノートパソコンを置いてアニメの「魔法少女ステラ」を流しながら仕事をこなしている。
木「…Aさん、なんでここに居るんです?」
後から部屋に入って来た木角は状況が追いつかず突っ立ったままだ。
『あ!木角さんお疲れ様です。この前の縛り方凄くためになりました!ありがとうございます!』
木「いや〜それは良かった!逃げられない様にするにはあれが1番ですから!…じゃなくて、Aさん場所間違ってません?」
『………仕事がね、終わらないんですよ。』
木「…はぁ?」
『本来なら私がママンとトゥギャザーに行った時点で台本もセットも出来上がってるのが普通だと思ってたんですよ。けど怖い事に全然話が進まないんですよね〜。』
上「完全に怠慢ですね。」
『それ言っちゃうと私の首が危ないので…なので脚本担当に話つけて台本書かせて、今はディレクターに持って行く企画書作ってます。ついでに自分用の台本も直しあるんですよね。
もー嫌ですよねぇと笑いながら話すAだが、ディスプレイを見る目と顔は笑っていなかった。
木(俺とは違うベクトルで仕事を抱えてる…)
木「それは大変でしたね〜…ほんっと心から同情しますよ…。」
上「木角君、さっきの企画書通った?」
木「あ゛ぁ゛!?無理矢理通したわ!!なんっっで先に言わねぇんだよ!いっつもギリギリになんねぇとやらねぇんだ!この野郎!」
上「木角君なら大丈夫でしょ。」
木「んだとゴラァ!?」
2人のやり取りにはすっかり慣れてしまったA。むしろ仲が良いなぁと心の中では微笑ましくさえ思っている。
『まぁまぁ、後それとは別の用事もあってここに来たんですけどね。』
上「Aさんは温泉の時に話ができなかったからと、わざわざこっちに足を運んでくれたんですよ。」
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作者名:水無月(みなづき) | 作成日時:2023年10月14日 12時