検索窓
今日:25 hit、昨日:19 hit、合計:4,997 hit

: ページ48

突然の提案に驚いて足が止まった。


Aを見るとすまなそうな顔をしながら裏道を見上げている。

『今回酔っ払って寝てしまった挙句…その、大人気なく大泣きしてしまって…でも、裏道さんはそんな私を受け止めてくれたからお礼、したくて。』

裏「そんな大した事してないけど…。」

『私にとっては嬉しかったんです。そんな事を言ってくれる人今まで会った事が無かったので…だから、私ができる事なら何かしたいんです!』

裏「……。」

『難しいですか…?』

裏「…なら、今度飯でも行く?」

『!…っはい!!是非行きましょう!』

今度は満面の笑みで嬉しそうに話すA。
この笑顔を見るだけでさっきまで胸の中で渦を巻いていた、モヤモヤとしていた感情が和らいでいく。裏道の疲れて固まった表情筋がふっと緩むのだ。

裏「そしたら今度空いてる日教えて。」

『分かりました!後で連絡しますね。裏道さんは週末の方が良いですか?』

裏「そうだな…仕事が終わってからでも構わないけど。」

『でしたら週末と平日両方考えておきます…っと、いつの間にか着いてましたね。』

気がつけば以前送り届けたアパートの前まで来ていた。

裏「そうだ、Aさん。」

『はい?』

裏「お礼は有難いけど、女性が『自分ができる事なら何かしたい』なんて簡単に言うなよ。」

『…何でですか?』

裏「何でって…男にそんな事言ったら何をされるか分からないんだぞ?変な事されたいのかよ?」

『あ、そうなんですね…気をつけます。』

裏「…本当に分かってんのか?」

『ふふっ、はい。大丈夫ですってば!』

裏「………ったく。」

裏道は屈託のない笑顔のAの頭をくしゃくしゃと撫でる。

『わっ!』

裏「…おやすみ、A。」

『…!!!………おやすみ、なさい。』

そう言って一瞬目を合わせると柔らかく笑い、そのまま背を向けて自宅への帰り道につく。

『……心臓に悪いですよ…裏道さん…。』

聞こえない声でぼそりと呟くと、Aも階段を上がり部屋に入って行った。

ーーーーー

荷物を片付けていると、スマホに通知が来ていた事を思い出した。改めてみると熊谷からの連絡だった。

『熊谷くん…どうしたんだろ。』

画面には休日に2人で出かけたいと表情されていた。
遅い時間ではあるが、熊谷も明日休みなのを知っていた為返信をしてみる事にした。

〈遅くなってごめんなさい。起きてたかな?〉

:→←:



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.8/10 (6 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
16人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:水無月(みなづき) | 作成日時:2023年9月4日 13時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。