天の声のお姉さんは今日も走る2【うらみちお兄さん】 (ページ46)

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『あーもー！これで良いんですかっ！？』

意を決して顔を上げると今まで見た事の無い、困っているような悲しそうな複雑な表情をした裏道を瞳が映した。

(…もしかして私が泣いている間、この人はずっとこんな顔をしていたのだろうか)

すっ、と頬を撫でていた手が目元に移動する。

裏「…目、真っ赤だな。」

裏道の瞳に映ったのは泣き腫らした目と、目尻に溜まったままの涙。痛々しくてそっと涙を拭うと、Aはびくっと震えると今度は顔を赤くした。

裏「…ははっ、泣いたり赤くなったり忙しい奴だな。」

表情がころころ変わる姿を見てどこか安心した裏道は笑みが溢れた。

『誰のせいですか、誰の！』

裏「さあな。」

わしゃっと頭を撫でるとじとりと見上げるA。いつもの様子に満足したのか裏道はソファーから立ち上がる。

裏「もう遅いし、送ってく。」

『えっ？近所だから大丈夫ですよ？』

裏「夜中過ぎてるんだぞ。危ないだろ。」

『大丈夫ですって！！』

裏「…これ以上拒否したら抱き抱えて家まで運ぶぞ。」

『そっ…！！れは…色々死んでしまうのでやめて下さい…。』

裏「なら素直に送らせろ。」

『…分かりました。』

Aはぶつぶつと文句を言いながらも帰る支度を始める。裏道はパーカーを羽織って鍵を手にしたが、まだ準備が終わっていないAを見て立ったままソファーに寄りかかった。

…正直、涙が溜まった瞳はいつもより綺麗で、誰の目も気にせず自分に縋って泣く姿を独占できるのが嬉しくなるなんて。

ピロンっ

MINEの受信を知らせる音が響いた。自分のスマホでは無くテーブルに置きっぱなしになっているAのスマホからだ。見てはいけないと思いつつも、つい目が行ってしまう。

そこにはふわふわとした嬉しい気持ちから一転して、息を飲むような文面が写っていた。

ーーーーーーーー

〈夜遅くに悪い。今度の休み、2人で出かけないか。〉

このままでは分が悪い。あいつらの提案にのるのは癪だがそんな事を言っていられる程冷静でもない自分に自分が驚いている。

熊「お前をもっと知りたいって言わせたんだからな。」

それはまるで「」のように胸を締め付ける。