まるで「 」のような ページ45
泣き始めてからどれくらいだっただろうか。
裏道はAが泣いている間抱きしめながらずっと背中を撫でたり頭を撫でたりしていた。Aはその体温が心地よく、泣き疲れた身体にじんわりと沁みてくる。
ただ、段々と落ち着いてきた気持ちと一緒に頭も冴えてくると、一緒にどうしようもない恥ずかしさも込み上げてきた。
(どうしよう!つい裏道さんの前で泣いちゃったしこの体勢…物凄く恥ずかしい!!)
裏「…少しは落ち着いたか?」
さらりと髪を撫でられながら裏道の声が耳元に響く。その声の近さにピクッと肩が跳ねる。
『…は、はい。取り乱してすみません。』
裏「別に。」
『………あの、』
裏「ん?」
『…その、えと、』
裏「何だよ。」
『………こっ、この体勢は心臓に悪いです…』
裏「……。」
爆発しそうな心臓を必死に隠して冷静を装ってみたが、声はどんどん小さくなり最後は蚊の鳴くような声だった。
頑張って言ってはみたものの裏道から返事が返ってこない。
『……?』
裏「……顔、見て良いのか。」
『えっ、』
裏「見られたくなかったんだろ。手、離したら見えるけど。」
『……ガン見じゃなければ。』
裏「……。」
しっかりと抱きしめていた手を緩める。
それに気付いたのか、Aはおずおずと俯きながら裏道から離れた。
(さっきから裏道さん黙ったままだけど、どうしたんだろう…?)
お互いに丁度向かい合うようになった時、裏道の手がするりと頬を撫でた。
『へ、』
裏「顔、見せて。」
『さっきガン見しないで下さいって言いましたよね!?』
裏「うんとは言ってない。」
『くっ…』
裏「ちょっとで良いから。」
まるで慈しむかのようにAの何度も髪を撫でて、そのまま頬に手を下ろして撫でる。いつもより低いトーンの声なのに柔らかく言われてしまっては断る事が出来ない。
(裏道さんの色気に殺される…っ!!)
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作者名:水無月(みなづき) | 作成日時:2023年9月4日 13時