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ギロリと睨みつけるが、兎原にしてはまともな事を言われて痛いところを突かれた。


Aは誰に対しても隔てなく優しいし、その優しさを勘違いする奴が出てくるかもしれない。想像するだけでも胸がチリチリと熱くなる。

兎「ま、詳しい話は猫田の店でな!」

熊「なら兎原の奢りな。」

兎「え"っ…お、俺、今日パチンコで負けてるのよ…」

熊「ゴチでーす。」

兎「せめて感情込めて言えや!!」

スタスタと進む熊谷とそれを追いかける兎原の方向は、行き慣れた猫田の店に向いていた。


ーーーーー


兎「猫田ーー!聞いてくれよ〜っ!!」

猫「兎原は相変わらずうるさいなぁ。」

兎原は叫びながら店に入ると猫田はいつものように緩く笑いながらグラスを洗っていた。

猫「お、熊谷も一緒なんだ?」

熊「……まぁな。」

猫「今日は客も居ないし、そろそろ店じまいしようかと思ってたから俺も飲むかなぁ〜。ちょっと待ってな。」

いそいそと猫田が閉店準備をしている間、兎原と熊谷はカウンターで一息ついていた。

兎「つーかお前さ、デートとか誘った事無いの?」

熊「誘われて行った事しか無い。」

兎「けっ!モテる奴の余裕かよ!!」

猫「なになに〜?兎原誰かとデートするの?あ、何飲む?」

兎「俺じゃなくて熊谷な!!あと俺ビールが入ったやつ〜。」

熊「……強め。」

猫「はいよー。」

そう言ってカクテルを作るとあっという間にカウンターに置かれた。猫田はごそごそと奥から日本酒を出してくるとグラスに手酌で注ぎながらにたりと笑った。

猫「それってこの前言ってたAちゃんが関係してる感じ?」

兎「そうなんだよ!コイツしっt」

ゴッ!!!

兎原が全てを言い終わる前に熊谷のパンチが頬にクリーンヒットした。

熊「いい加減黙れ。」

猫「ははっ、随分と荒れてんなぁ。」

険しい顔をしたままカクテルを飲み干す熊谷。もう一杯、と猫田に空いたグラスを差し出す。

猫「はいはい。…で〜?熊谷はその子となかなか上手くいかないのか?」

熊「………仲は悪くない。他の奴ともあいつが楽しそうならそれで構わない。」

猫「ふんふん…そんで?」

差し出されたグラスをじっと見つめる。

そうだ。Aが笑っているならそれが良いと思ってる。
ただ、いまだに見せてこない影の部分や俺が知らない過去の事、その笑顔をもっと、

熊「……俺に見せろよ。」

その言葉を呟いた時、胸の中に何かがストンと落ちた。

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作者名:水無月(みなづき) | 作成日時:2023年9月4日 13時

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