天の声のお姉さんは今日も走る2【うらみちお兄さん】 (ページ38)

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裏「……触られて痛く無いのか。」

『このくらいだと慣れちゃっ…つっ！』

腫れている場所を少しだけ力を入れられると、ズキンと鈍い痛みが走った。

裏「痛みに慣れるわけないだろ。もっと自分を大事にしろよ。」

『……自分を大事に、ですか。』

目をパチクリとさせて今初めて聞いたような気の抜けた返事が返ってきた。そのあと何か考え込むように少し俯いた。

裏「まぁ、俺が言う事でも無いけどな。」

普段から自分に優しくない自分が、誰かを注意するなんて馬鹿げてる。けれど他の人までそんな事はして欲しくないと思っているのも事実だから仕方ない。

裏「ほら、終わったぞ。」

湿布を貼り終え裏道は顔を上げたが、向かいに居るAは少し俯いたまま反応が無い。先程強めの口調で言ったからだろうか。それとも傷を強く握り過ぎたのだろうか。今更やらかしてしまったのではと焦ってしまう。

裏「…腕痛かったか？」

Aは首を振るだけ。

裏「俺に注意されて嫌だったか？」

ぶんぶんと強めに首を振られる。けれどAは俯いたままだ。裏道は段々とイラっとしてきてAの肩を掴んだ。

裏「だったらさっきからなんで黙ってるんだよ。言いたい事があるならっ…」

その時ぱたり、と水滴が落ちる音がした。
ぱた、ぱたりと続いていく。
掴んだ肩は震えていた。
そこでようやくAが泣いているのに気がついた。

裏「……は、」

驚いた裏道は言葉が出なかった。
目の前には確かに泣いている女の子が居るのに気の利いた言葉一つも出てこなくて焦るが、何を言えばいいのかぐるぐると思考が定まらず無言になってしまった。

この間約10秒程。

焦って肩から手を離すとAが裏道の顔の前にばっと手を出す。