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腕にしがみつきトロンとした表情のAは少しむくれながら裏道に擦り寄った。
その瞬間熊谷は一瞬表情を硬くして固まった。
裏道自身はかなり驚いたようで熊谷とは別の意味で固まっている。
裏「ちょっ…!Aさん…酔いすぎ。」
『そんなに酔って無いですー!今の仕事は好きですけど、上司の思うツボなのが悔しいだけですっ。』
裏「…完全に酔っ払いの台詞だろ。」
裏道はため息をつくと、片方の空いた手でAの頭をゆっくり撫でた。
兎「まぁ良いんじゃ無い?そのお陰で俺達にも会えたんだしさ!なぁ?熊谷ぃ。」
熊「……あぁ。」
『……わたし、こっちでしごと…てたほうが…たのし……』
裏「え?」
裏道に撫でられているのがよほど気持ちよかったのか、最後は聞き取れないほどの小声で話すとAは静かに寝息を立て始めた。
裏「…もしかして、寝た?」
兎「Aちゃーん?…おーい。」
『……すぅ…。』
いつのまにか裏道の掴んでいた腕から肩に寄りかかり気持ちよさそうに眠っている。
兎「…よく起きねぇな。もしかして結構疲れてたんかな?」
裏「だろうな。」
いつもニコニコとしながら仕事をしているからか、疲れている顔など見る事が無い。たまに電池が切れたようにうたた寝をしている時があったがほんの数回程度だ。
裏道はもう一度Aの髪を撫でると自分の肩からさらりと滑り落ちていく。
裏「兎原、ソファー空いてるか…って、おい!どんだけ汚したんだよ。」
兎「サっ、サァセン…」
兎原の後ろにあったソファーには餃子を作っていた時に使っていた皿やボウルが散乱していた。
裏「ったく、後ちゃんと片付けておけよ。…となると仕方ないな。」
裏道は肩に寄りかかっているAの頭を自分の身体に寄せてそのまま横抱きして立ち上がる。
裏「俺はAさんを寝室に寝かしとくけど、お前らはまだ居るんだろ?」
兎「…あ〜…ははっ、どっ、どうしよっかなぁ〜?」
兎原はずっと無言の熊谷の方に視線をやる。
熊「…すいません。今日は帰ります。」
俯いたままの熊谷は静かに立ち上がった。
裏「別に構わないけど…お前大丈夫か?」
熊「問題無いです。じゃ。」
熊谷は裏道に会釈すると、そのまま振り返らず自分の荷物を持って玄関へ向かって行った。
兎「ちょ、熊谷待てよ!…すんません!俺も帰りますね!…おい熊谷!なぁて!」
熊谷の異常に気付いたのか兎原も慌てて荷物を持つとバタバタと出て行った。
▪️…加筆修正済み
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作者名:水無月(みなづき) | 作成日時:2023年9月4日 13時