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『で!とうの本人は宣言通りMHKに1発合格をし、下積み時代を重ねた上に今のポジションに至るわけです。』
兎「今ってプロデューサーとか?」
『今?高見野は今は本部長だよ。』
兎 裏「「は!?」」
兎「入ってどんだけやりゃあそこまで行くんだよ!入社してそこまでたってないだろ?!そんなに年上なのか?」
『私の2歳上だったかな。…本当にどんな手を使ったのか。昔からのらりくらりと掴みどころが無い人でしたから。』
熊「お前といい、その先輩とやらも経歴がエグいな。」
『私関係無くない!?』
熊「【Myuつべ】の再生回数1万回超えてる奴に言われてくないわ。」
『ぐっ…ひぇも、そこまでひゃないれふ。』
熊「謙遜のしすぎは嫌味になるぞ。」
熊谷はAの頬を軽くつねると横に引っ張る。Aは少々不満そうにふくれていた。
兎「で?AちゃんはどうしてMHKに入ったの?」
熊谷につねられた頬をさすりながら少し言いにくそうに口籠る。
『……が、良いって言われたの。』
裏「…何だって?」
『だっ、だから!高見野から声が良いからアナウンサーになって部下になれって言われたんですよ!』
Aは照れくさいのか、少し視線をそらしながらもごもごと話し始める。
『私が大学に入学して、たまたま高見野と同じ講義があった時に論文を発表する機会があったんです。その時に声をかけられました。私も幼児心理学には興味はありましたし、勉強を教わるのは良かったんですが、高見野が卒業近くなった時に言われたんです。』
高〈俺はMHKに一回で合格するからお前は卒業したら同じ会社に入れ。その声を無駄にするな。良いか、必ず俺の部下にするから覚悟しておけよ。〉
『しかも私が3年の時に、MHKでやってた新人アナウンサーのコンテストに勝手に応募しやがったんですよ!!』
ダンッとぐい呑みを置くと、少し座った目をしながら語るA。
裏「……Aさん、そろそろ水飲め。」
冷蔵庫から取り出してきたミネラル水を手渡すとごくごくと喉を鳴らしながら飲んでいる。
兎「コンテストなんてやってたっけか?」
熊「1年に1回、新人募集の前に確かやってたような気がする。」
裏「それに受かってしまったと…。」
『絶対受からないと思っていたんですよ!他には声優の卵の方や専門学生も居ましたから。なのに…受かっちゃったら入るしか無いじゃないですかー!』
自分本意ではない状況を思い出してわっと裏道の腕にしがみつく。
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作者名:水無月(みなづき) | 作成日時:2023年9月4日 13時