天の声のお姉さんは今日も走る2【うらみちお兄さん】 (ページ4)

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全員が席につき、風呂出と出来田が乾杯の音頭を取ると皆それぞれ料理やお酒に舌鼓を打つ。

詩「お酒も美味しいわねー！料理にも合うわぁ！」

料理もそこそこに日本酒に手を伸ばす詩乃。お猪口で飲んでいるからかいつもよりかなりペースが早い。

『詩乃さん、どうぞ。おつぎしますよ。』

詩「ありがとう〜！Aちゃんにお酌してもらうなんて幸せ〜。」

その顔はすでに赤くなり、舌っ足らずな口調になって来ていた。勢い良くハイペースに飲む詩乃が少し心配になるくらいだ。

『詩乃さん、ハイペースすぎませんか？大丈夫です？』

熊「姉さんならほっといて問題ないぞ。」

『熊谷さん。』

熊「今日は無茶なテンションで来たんだろうから。これくらいは許してやれ。」

相変わらず涼しい顔で冷酒を飲む熊谷。

『ん、詩乃さんも色々大変そうだしね。あ、熊谷さん、良ければ注がせて？』

熊「…悪いな。」

空いているお猪口にお酒を注いでいると意外な返事が返って来た。注ぎ終わると熊谷を見上げるが、表情はいつもと変わらない。

『いつもお世話になってるお礼だよ。こんな事しかできないけどね。』

熊「……そんな事無いけどな。」

ボソリと呟くと、手にひんやりと感じた酒をくいっと飲み干す熊谷。呟いたその小さな声はAには届かないほどの音量だ。

熊「そういうお前は飲んでんのか？」

『んー、もう少し食べてからの方が良いかな。この前結構飲んじゃったからし…他の人が居なければ別だけどね。』

にこにこと笑いながら自分が言った事を素直に守ってくれている姿はどこか懐かしく感じて、つい甘やかしたくなりワシャワシャと頭を撫でる。

熊「ちゃんと食べろよ？」

『うん！お刺身も美味しいし、あとこの煮物！味がしみてて美味しいんだよ！』

熊「なら俺のやつ箸つけてないから食え。」

『え？いいの！ありがとう！』

熊「おう。」

手渡す熊谷の目元と口元は優しく緩んでいた。

詩(…熊谷君のファンが見たら卒倒しそうな顔だわね。)

裏道は2人のやり取りを横目で見ては酒を煽っていた。同年代なのだから仲良くなって良いと思うし、前にも感じたAのどこか強張っているような雰囲気が無くなるのは良いと思う。

裏(熊谷なら兎原みたいに問題がある訳でも無いし…)

ちらりと見ると楽しそうに笑うA。
その姿を見た裏道の胸にちりちりと何かが引っ掛かるような気持ちが芽生えるが酒と一緒に流してしまえばいい。そう思った。