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熊谷が切り終えた長芋はどれも均一の形をしていて、

しっかり酢水にも浸してある。
台所の後処理もきっちりとしてまな板やシンクに水ひとつ残っていない。

『熊谷さん…すっごい器用なんだね。普段から料理してるんだっけ?』

熊「………実家が板前やってるからな。」

少し複雑そうな顔をして答える熊谷に、これ以上は聞かない方が良いかな、と思った。

『そうなんだね。そしたら…あとは長ネギを小口切りにしてもらって良いかな?』

熊「まかせろ。他はあるか?」

『後は煮たり和えたりするだけだから大丈夫だよ。ありがとう。』

熊「他にあれば遠慮なく言えよ。」

『うん!』

ふっと笑う熊谷の笑顔は優しかった。その2人をさっきから2人をチラチラと見ている裏道だが本人は全く気づいていない。
向かいに座っている兎原は、熊谷と裏道がAを気に入っているのは理解しているが、それが恋と呼ばれるものなのかは怪しいところだ。

兎「裏道さん、おーい!うーらーみーちーさんってば!」

裏「…っ!何だよ!やかましい!」

兎「手、手!」

はっと我にかえり言われたまま手元を見ると綺麗に包んであった餃子の皮が破れていた。

兎「あーもー!Aちゃんが可愛いのは分かりますけどなーにやってんすか!」

裏「……言いたい事はそれだけか。」

兎(あれ、何もされない…?)

兎「いや、なんつーか熊谷とAちゃんって良い雰囲気な感じしません?あいつあんなに笑ったりしないし。」

裏「………まぁ、そうだな。」

楽しそうな2人が頭の中でチラつく。

裏「残り少ないんだし、後はお前作れよ。」

そう言って裏道は立ち上がると洗面所で手を洗い、煙草とライターを手に取りベランダへ向かった。

『あれ?裏道さんは?』

兎「煙草休憩じゃね。さっきベランダに出て行ったし。」

Aはおかずを作り終わり、兎原のいるリビングにやって来た。ふと、兎原の手元が目に入る。

『兎原さん!それ餡を詰め込み過ぎ!焼いてる時に破れちゃうよ?』

兎「んなもん腹に入れば一緒だって!」

『料理は見た目も大事だよ!ほら、こうすれば綺麗に出来るでしょ。』

兎原の横に座り、作り方をおしえていると熊谷も続けてテーブルについた。

熊「まだ出来上がってないのか、グズ。」

兎「うっせ、細かい作業苦手なんだよ!」

ベランダにいた裏道は3人のやりとりをじっと見つめていた。

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作者名:水無月(みなづき) | 作成日時:2023年9月4日 13時

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