天の声のお姉さんは今日も走る2【うらみちお兄さん】 (ページ19)

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裏の独白 1 ページ19

最初は少し小柄な、珍しく礼儀正しい人が来たと思った。

その礼儀正しさが、緊張感のある笑顔の元になっている事を理解するのに時間はかからなかった。
笑顔なのに、目元がたまに笑っていない。

自分だって同じ様なものだけど、その笑顔の中に怯えているような少しの違和感があった。

聞けば別の部署からうちに派遣に来たと言う。俺達は一切知らされていない事から嫌な予感がした。その予感は当たり、暫くはADの仕事がメインになった。
本人は始めこそ困っていたが、いざ仕事になればいつも真面目に取り組む姿がいつも目に入ってきた。

何故か熊谷がやけに慣れるのが早かったな。確かに同年代だけど、それでもあいつが笑いかけたりするのは家族くらいじゃないか？

ただ、自衛する部分は欠けているのか危なっかしい。
酔ったら周りが色々と困る反応をする人だ。
酔っ払いだと理解してるのに、あんな事言われて、あんな笑顔向けられて、飲み会の帰り道なんてどれだけ振り回されたか。

…きっと本人は覚えていないんだろうけど。

家に帰って寝るまでの間ふと話題になった『お空のお姉さんボイス』聞いてみた。
流れてくる声はさっきまでとは違う柔らかい声だった。
いつものようにベッドに転がり眠剤が効くまで眠れない時間を過ごすのかと思ったら、久しぶりの睡魔に襲われた。

そこから眠れない時にはAさんの動画をイヤホンで聴きながら寝るのがお決まりになったなんて、死んでも知られたくない。

温泉に行った時は熊谷の過保護が輪をかけて酷くなってたな。

…そういえば行く時に木角さんに絡まれてたせいなのか？…いや、だからと言ってあそこまでするなんて、もはや彼氏かよ。

そんな熊谷に苛ついてただけなのに、つい本人に八つ当たりしてしまった。

外に出て煙草を吸いながら1人の時間を過ごす。段々と冷えていく頭で自分がした事に罪悪感が増して行く。そんな時にいけてるお兄さんからAさんが具合が悪くなったと聞いて慌てて旅館へ戻った。

そこで熊谷と一緒だったからつい、隠れてしまった。

「そんな事言われて、裏道さんの事嫌じゃねぇの？」

ぎくりと身体が反応する。
そりゃ当たり前だよな。

なのに

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▪️2023.9.26 一部加筆修正しました。
◾️2023.11.22 タイトル修正しました。