天の声のお姉さんは今日も走る2【うらみちお兄さん】 (ページ12)

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裏「…なら、そのままで良いから聞いて。」

『何でしょうか…。』

沈黙が流れる。それでも逃すまいと繋いだままの手は温かい。裏道はぎゅっと手を握る力を込めると話し始めた。

裏「…悪かった。」

その声はとても小さく、耳をすまなさければ聞きこぼしてしまう程だ。

裏「…俺が勝手に苛ついただけで、Aさんはなにも悪く無い。」

『…でも、その理由を作ったのは私ですよね？』

裏「…違う…とも言えないけど、これはただの八つ当たりだから、本当にごめん。」

Aは背を向けたまま振り向かない。返事も返ってこない。握った手もそのままだ。裏道も合わせる顔がなく、俯いたまま話していた。

裏「そりゃ、怒るよな…」

ボソリとつぶやいた時に、ぎゅっと手を握られた。その手は少し震えていた。
裏道は少し驚いていると、後ろを向いたままAは沈黙を破った。

『裏道さん、私、迷惑かけて無いんですか？』

裏「…え？う、うん。」

『裏道さんに嫌な思いさせて無いですか？』

裏「それはむしろAさんの方がしてるんじゃないの？…こんな俺に言われて。」

『…確かに裏道さんはメンタルのアップダウンは激しいし、子供達にはまだ教えなくていい事をいつも言ってるし、兎原さんや熊谷さんへの愛情表現はちょっと歪んでますけど。』

裏「おい。」

Aは握っていた手をもう一度優しく握り返した。

『不器用で優しくて、繊細ですよね。今だってこうやって来てくれてるのに、嫌な思いなんてしてないですよ。』

そう言いながらふにゃりと優しく笑う。きっと嫌な顔をされるだろうなと頭の中で考えていた。けれど全く別の事を言われて裏道は俯いたまま固まってしまった。

裏「…何で俺の事知った気になってんの。」

『え？うーん…他のメンバーにもなんだかんだで声かけてくれるじゃないですか。キャパオーバーになるのは真面目に仕事してるからかなって思ってましたよ。』

裏「俺、別に優しく無いけど。」

『優しくなかったから、今ここに来てないと思いますよ？』

裏「…それは自分の為ってだけだから。」

『…裏道さんって不器用ですよね。』

Aが困ったように笑いながら裏道の顔を覗き込むと、困ったような複雑顔が見えた。目線を合わさないように逸らしてもう片方の手で顔を押さえている。