【ま.ふまふ】雪の世界に求めるもの。―完―

肆／第十七話　君に生きていてほしい世界 ページ19

「Aは生きてるときに辛い思いをたくさんしてきた。優しさに触れる事なんてないに等しかった。だから、せめてここでは、優しさに触れててよ。

僕が、Aのことを守るから。

Aにはこんな優しさ要らないって思うかもしれない。でもね。

君が生きてるだけでいいんだ。

君が傷ついてるところなんて誰も見たくないんだ。笑ってる顔が見たい。泣き顔なんて見飽きたよ。君にはまだ生きててほしい。君はまだ生きれる命だよ？

生きれるかどうかじゃない。

”僕が”君には生きててほしいんだ。

今はまだ戻る気にはならないかもしれない。でも、絶対に戻すから。
きっとAは生きられる。大丈夫。

もしつらいことがあるならまた僕を呼んで？君の心の中にずっといるから。
優しさに触れて壊れるんじゃない。その優しさに触れて”幸せに”なってよ。
きっと、君のことを心配してくれてる人がいるから。その人だって君の笑顔が見たいはずだから。

でも、無理に笑わなくていい。
自然に笑える日が来るまで僕がAのそばにいるから。
Aのことを一人になんてさせない。寂しいなんて言わせない。

いつか、寂しさを感じなくなる日が来たらきっと君はもう大丈夫。
それまでは泣いてていいよ？僕が全部受け止める。だから、今は精一杯泣いて？」


そんなことを言われたら涙が止まらないじゃん……


そんな言葉反則だよ……


もう、まふがいないと生きていけなくなっちゃうじゃん。


まふと離れたくなくなっちゃうじゃん。


私はずっと泣いていたんだ。まふに抱きしめられながら。
ずっと。


まふもそんな私と同じように涙を流していた。


外に舞う雪はまるで花吹雪のようにきれいで、キラキラして、綺麗だった。


偽物だとは思えないぐらい輝いて見えた。


ああ。こんなこと、あったな。





私が生きてるときにも。





こんな風に抱きしめられて、「もういいよ」って笑って言ってもずっと離してくれなくて。
そんな中、二人で泣いたっけな。


もう、そんなことないと思ってたのに。


そんな彼もまふと同じことを言ってた。


君が生きてるだけでいいんだ。


名前は思い出せないんだ。
あなたの名前はなんですか？


まふ、思い出させてくれてありがとう。


私は一人じゃなかったよ。


まふもいる。そらるさんもいる。坂田さんもいる。紫の髪の人も。
そして、名前を思い出せない彼も。


私はずっとまふと一緒に泣き続けた。




綺麗な雪の降る夜だ。

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