【ま.ふまふ】雪の世界に求めるもの。―完―

肆　／第十六話　優しさに触れない世界 ページ18

私は紫の人がどこかに行った後、考えてみた。



優しさに触れないようにするにはどうしたらいいか


まふは多分、私の事を気にかけてくれるかもしれない。
ただ、それは優しさに触れることになる。


そうすると余計に寂しくなるだけ。


なら、無視したらいいのかな？


そうしよう。
きっとそれで私は傷つかなくてもいいんだ。
それなら、私はもう寂しいなんて思わなくても済むんだ。


そんなことを考えてたらまふがいつの間にか後ろにいた。


「何考えてるの？さっき誰と会ってたの？何を話したの？」


まふは少し怒ってるような気がした。
これは優しさに触れることにはならないんだ。なら、話してもいいか。


『紫の髪の人と話してたの。』


心なしかまふの顔が少し青くなった気がした。


「その人はなんて言ってた？」


なんでそんなことが気になるんだろうと思いながら少しずつ話した。


『まふがいなくなってから、少し寂しくて泣いてた。』


まふは驚いた顔をしていた。
私は続けて話した。


『その時に声をかけられて、寂しくなったって言ったら………』


言葉が詰まった。
この先を言ったらいけない気がしたから黙ってた。
でも、まふに急かされた。


「その続きは僕には話せないこと？なんで話せないの？」


優しさに触れたら私が壊れてしまうから。寂しい気持ちを思い出すから。
だから言えないなんて言えるわけないじゃん。


「ッ……そんなことないよ。」


あぁ。そうか。まふは私の気持ち、全部わかっちゃうんだ。
隠すなんてできなかったんだ。


気づいたら抱きしめられた。
何か水が落ちてきた気がした。それがまふの涙だと知って驚いた。


『………なんで、なんでまふが泣いてるの？まふが泣く必要なんてないじゃん。なんで？私には分からないよ。もう優しくしないでよ。優しくされたら私が壊れちゃうんだよ。なのに、なんで……』


私も涙が出てきた。


もう優しさなんてなくていいんだ。
優しさをもらうことなんてもうとうの昔に諦めたはずなんだよ。なのに、なんでまふは私のことを優しくするの？


いっそのこと虐めてよ。殴って、蹴って、刺して、切り裂いて、跡形もなく私を消してよ。
そんな優しさ私にいらないよ。私の心が壊れそうになるんだよ。もう、寂しいなんて感情思い出させないでよ。


そんなことを思ってたらもっと強く、でも優しく抱きしめられた。

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